研究課題/領域番号 |
26420495
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
堀 智晴 京都大学, 防災研究所, 教授 (20190225)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 避難 / 洪水 / シミュレーション / 水害 / 情報 / 警報 / 氾濫 |
研究実績の概要 |
避難経路上の障害情報が避難行動の効率性に与える影響を分析するために必要となるモデル開発を行った。具体的には、避難者に対してリアルタイムで浸水状況に関する情報(浸水して通行できなくなった街路の情報)を伝え、この情報を得た避難者が目的地までの経路選択をやり直して移動する機能を、前年度までに開発した避難エージェントモデルに追加実装した。新たな経路は、障害のある経路を除いた街路ネットワークについて最短経路探索を行うことで求めている。こうした機能を実現することで、例えばスマートフォンなどを通じて、自分の現在位置を含む比較的広い地域の街路の利用可能・不可能情報が与えられた場合に、避難行動にどういった影響が与えられるかが、様々な条件下で定量的に分析することが可能になった。 開発したモデルを用いて試行的に行ったケーススタディの結果から、多くの場合にこうした経路障害情報は、避難成功率(無事に避難所に到着できた人の割合)を向上させることが確認できた。しかしながら、一部のケースでは経路障害情報を伝達するという条件下の方が、避難失敗者が多いという結果となった。これは、ある時刻に得られた障害経路を避けて経路選択を行った結果、その時にはまだ浸水していないもののその後の移動中に深く浸水してしまう経路を選んでしまうという事例が発生しているためである。このことは、現に避難をする際のリアルタイムの状況把握だけでなく、各経路が本来持っている浸水に対するリスクの大小も考慮した避難経路計画の必要性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主要な課題としていた、洪水氾濫時の車両行動を組み込んだ避難行動シミュレーションモデルの骨格はほぼでき上がっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は計画の最終年度に当たるため、これまで開発してきたシミュレーションモデルのコードの再整理を行い、より適用性の高いソフトウエアシステムとするとともに、実地域で具体的な避難計画を考察するためのシミュレーション分析の方法についても検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、避難行動モデルの追加機能に関するコーディングや試行計算が主な課題となったため、現地調査のための旅費やシミュレーション解析に伴う消耗品の需要が当初予定より小さかった。
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次年度使用額の使用計画 |
実地域における具体的な避難計画策定のための解析をこれまで開発してきたシミュレーションモデルを駆使して行うため、現地調査や打合せのための旅費、解析に伴う消耗品が多く必要になる。また、本研究の前半で行った研究に関する論文が平成28年度開催の国際会議に受理されたため、発表のための旅費等としても活用する。
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