研究課題
前年度に引き続き、避難移動中に浸水などの経路障害情報を避難者に通知することによる効果を、シミュレーションを通じて解析した。平成27年度に行った解析結果と合わせて考察すると、移動開始前や移動中に経路上の障害情報を伝達できれば、避難行動の効率性や安全性を一般には高められるものの、情報提供のタイミングや内容、氾濫水の挙動の組み合わせによっては、かえって避難失敗者を増加させるようなケースも存在することが判明した。こうした事態を避けるためには、避難中のリアルタイムの情報提供といったICT技術の活用はもちろんであるが、予め地域の地形特性や河川の整備状況に応じた洪水氾濫と避難状況のシナリオ分析を詳細に行い、代表的なシナリオ別の経路や避難場所を含めた避難計画を策定しておくことが重要であることを、本研究での解析結果は示唆している。本研究計画は平成26年度から28年度の3年にわたるものであり、当初は、研究代表者らが従来より開発を進めてきた個人レベルの水害避難行動シミュレーションモデルに、経路上の混雑の影響を算定できる機能を組み込むことと、徒歩だけでなく自動車による移動を表現できる機能を組み込むことを主な目標としていた。しかしながら、本研究計画が採択される以前の準備段階からこれらの検討を開始していたため、これら機能の組み込みを研究機関の前半において達成することができ、後半には、上記のような避難行動に与えるリアルタイム情報の効果に着目した解析や、視点を広げて津波からの避難に関した解析も行うことができた。今後は、本研究の成果を踏まえ、開発したソフトウエアのコードを整理して公開することや、具体的な避難計画立案の支援を行うシステムの開発に取り組んでいく予定である。
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Proc. of the 20th Congerss of the Asia Pacific Division Of the International Association for Hydro Environment Engineering and Research
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