研究課題/領域番号 |
26420502
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
大本 照憲 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (30150494)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 荒瀬ダム / 礫床河川 / 流れの三次元構造 / 河床変動 / 局所洗掘 / 土砂動態 / 河川環境 / 微細土砂 |
研究実績の概要 |
本研究では,静的平衡河床を対象に開口部を有する堰が下流の河床変動に与える影響および堰下流域に発達した砂州上の流れの三次元性について検討した.得られた主要な結果は以下の通りである. 1) 開口部を有する堰周辺の洗掘は,開口部周辺に集中し,洗掘の面的広がりおよび深さは相対越流水深の増加に従って小さくなる.2)最大洗掘深および最大堆積厚は,静的平衡河床においては相対越流水深の増大に伴って指数関数的に減少する.3)堰直上流における洗掘の横断形状は, W字形状で類似し,堰先端で極大洗掘深を示し,開口部中央で盛り上がり,相対越流水深の増大に伴い洗掘傾向は弱まっている. 4)堰下流において最大堆積厚が発生した位置の横断形状は,相対越流水深0.22-0.83の範囲では,y=0cm,y=±12cmの3カ所の近傍で峰部が見られ,y= ±6cm近傍では谷部に当たることが分かる.5)堰上流域では堰開口部近傍において強い下降流が現れ,堰下流域では砂州との位置関係が強く,砂州上では上昇流,砂州間の谷部において収束する下降流が認めらた.6)堰前面で発生した横断方向に軸を持つ馬蹄形渦は堰開口部を流下するに従って流下方向に軸を持つ縦渦に向きを変え,その外側には逆回転の縦渦が形成された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)水理模型実験によりダム撤去がダム直上流および直下流における流れおよび土砂動態に与える影響 荒瀬ダムの撤去は,撤去中の治水安全度や河川環境への悪影響を極力小さくするために6年間に亘る世界でも稀な6段階施工が取られている.そのため施工段階毎に堤体形状が変化するが,各段階に応じた堤体が流れや土砂動態に与える影響について実証的検討は成されていない.本研究では,荒瀬ダム上流域において大量の土砂が浚渫され,そのために出水によるダム下流域における土砂堆積を予測することが困難となった.そのため,ダムあるいは堰に開口部を伴う場合の河床変動および流れの三次元構造について検討を行い,その結果を査読付論文(和文)に纏め,現在,英文を纏めつつある. また,現地調査は継続して実施している.
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今後の研究の推進方策 |
1)荒瀬ダムの直上流および直下流における流れおよび土砂動態の現地調査によりダム撤去が河道に与える影響 2)水理模型実験によりダム撤去がダム直上流および直下流における流れおよび土砂動態に 与える影響 本研究では,静的平衡河床および動的河床を対象に,開口部を有する横断構造物において相対越流水深が堰下流の河床変動に与える影響および堰下流域に発達した砂州の基本特性および河床上の流れの三次元構造について検討した.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,荒瀬ダムの模型を想定していたが,熊本県企業局により荒瀬ダム上流および下流において大量の土砂浚渫を実施したため模型実験による再現が困難と成った.そのため,ダムおよび堰に開口部を設けた基礎的研究にテーマを絞った.研究費の残額は模型水路を新たに造らず既存の水路を加工したためである.
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次年度使用額の使用計画 |
現在,基礎研究に絞った河床変動および流れの三次元構造について検討している.開口部の形状を変化させた実験を実施するために研究費を投入する予定である.
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