研究実績の概要 |
沿岸域におけるフロキュレーションによる懸濁物質の粒径変化に対しては乱流が強く影響する。そこで,平成29年度は,浅海域における乱流特性量の把握を目的として,大分県中津市の中津干潟ならびに福岡市西区の江ノ口川感潮域における現地観測を中心に研究を推進した。中津干潟における観測期間は2017年9月22日~9月23日(中潮)の2潮汐間,江ノ口川感潮域における観測期間は2017年11月18日~11月19日(大潮)の2潮汐間である。観測では,超音波流速計(ADV)による流速測定および濁度計による濁度測定を実施した。また,測定機器設置地点近傍における底質採取を行った。超音波流速計によって15分毎に測定された16,384個の流速データを用いてスペクトル解析を行ったところ,水面変動のスペクトルにおいてピークが見られた0.1~1.0Hzの周波数帯で流速変動のスペクトルが-5/3乗の傾きから大幅に外れているのが確認された。これについては波浪による海水流動の影響と判断されることから,流速変動のスペクトルにおける波浪の影響を考慮しつつ,スペクトルの勾配が-5/3に従っていると考えられる周波数帯と低周波数側で勾配が-5/3から外れている領域との境界を推定した.その結果,上げ潮時と下げ潮時には0.6~1.1Hz付近,満潮時には0.08~0.4Hz付近であり,諫早湾の底層で観測された既往の研究結果と比較して,同程度か本研究の観測結果のほうが1オーダ高い値を示した。一方,現地の底質を用いたキャリブレーションによって濁度計の測定値からSS濃度を推定した結果から,冠水直後にSS濃度が高くなり,満潮~下げ潮にかけてSS濃度が減少する特徴的な変動が確認された。
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