研究実績の概要 |
2017年度からは主として波浪推算に関する研究を行っている。波浪推算には海上風データが必要である。特に再解析風データを波浪推算などの海洋モデルに使用する場合,再解析風データセットの時間補間が必要である。そのために多くの場合,格子点ごとに時系列データの時間補間を行う。ところが台風や移動する低気圧などを格子点ごとに時間補間を行っても移動する低気圧を再現することはできない。時刻tと時刻t+Tの間の時刻の, 移動する低気圧を補間を考える。この場合, 時刻tの低気圧の位置と, 時刻t+Tの低気圧の位置の2つの低気圧が出現する。これは明らかに不適切である。そこでこのような擾乱の動きも再現する時間補間法を報告者は開発した。そしてそれを波浪推算に適用した。 2018年度はこの研究をさらに進め,多くの係留ブイの波高・周期・波向きの観測データと波浪推算値との比較を行った。また漂流ブイの波高の観測データと波浪推算値との比較も行った。これらの比較の結果,従来の格子点ごとに時系列データを時間補間に比較して, 擾乱の動きも再現する時間補間法によって,波浪推算の精度が改良することが示された。2018年度はこの成果を論文として発表した。 さらに漂流ブイの波高・周期の観測データと波高・周期の再解析データを比較した。その結果,再解析波高データは海の流れが速くなるほど,その精度が低下することが示された。また波の伝搬方向が海が流れていく向きと反対の場合,再解析波高データは過小評価されることが示された。
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