H26年度は提案する湧昇流発生法の概念が妥当である事を均質流の実験と数値計算の実施によって検証した.H27年度は提案する手法が現地においても効果的である事を検証するため,現地の事例として野村ダムを取り上げたうえで,水質が悪化しやすい夏期の成層条件を実験的に再現して湧昇流の挙動を明らかにした.また,成層場を再現した数値計算を実施し,実験結果と数値計算結果が良く一致することを明らかにした.これにより,実験技術上は測定困難な湧昇流の諸量を数値計算により明らかにすることが可能となった. また,野村ダムの水質が悪化しやすい夏期で,かつ流入河川流量が少ない条件下において提案する手法によって誘起される湧昇流が水表面まで到達して上下層混合効果,引いては水質浄化効果が期待されうることが明らかにされた. なお,提案した原理を利用した湧昇流発生手法には様々な工学的手段が考えられる.本研究ではコスト面でより実用的であると考えられる湧昇流発生塔による手法を提案した.そして,提案した湧昇流発生塔の有用性を無次元指標の導入により野村ダムの現地条件を再現した実験より検証した.さらに,広範囲な水理条件での実験を実施して湧昇流が水表面まで達する限界の条件を示す曲線(水質浄化限界曲線)を示した. 本研究における実験および数値計算によって提案する手法の有用性は検証されたと考える.しかし,現地において提案する手法を使用する場合の上下層混合の程度の定量的把握および水質浄化効果についての定量的な評価については残された課題である.
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