研究課題/領域番号 |
26420508
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田村 亨 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80163690)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生活圏 / 施設計画 / 国土計画 |
研究実績の概要 |
本研究は、次の3つの段階から成る。①農業センサスデ-タ、個別産業・生活関連施設の集積デ-タとNITASデ-タとの統合を行い、産業立地パタ-ンと施設整備パタ-ンから地方部の衰退過程を実証分析する。②都市と農村機能の同時消費による世帯・コミュニテイの生活質向上をモデル化する。③自己組織化モデルを用いて、広域生活圏を構成する都市と農村の階層原理をモデル化し、地方部を対象とした国土管理上の施策の有効性を把握する。 平成26年度は、上記の①、②と③の一部を行なう。①に関しては、農業センサスデ-タ、個別産業集積・生活関連施設デ-タとNITASデ-タの統合と、生活圏域の衰退過程の実証分析を行った。前者については、地方部の設定自体が未確定であり、まず、その設定が必要であった。地域は、時代とともに変化してゆくものであり、特に、人口減少下では、その変容が課題とされており、その分析に使うデ-タベ-スの作成がこの部分である。②の一部に関しては、都市と農村機能の同時消費モデルの構築を行った。③の一部に関しては、階層原理のモデル化を行った。ここでは、250mメッシュで構成された広域生活圏域が、「医療・教育などの施設再配置」と「交通網の維持管理」によって導かれる人口変容によって、時系列的に変化してゆく状況を、「生活圏」・「都市と農村(世帯・コミュニティ)」という階層構造の中で捕らえて、地図上に再現することを行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、①世帯・コミュニティ単位で、都市機能と農村機能との同時消費の形態を理論的にモデル化するとともに、②地方生活圏域単位で、「医療・教育などの施設再配置」と「交通網の維持・管理」による、道路沿線への集住などの機能の同時消費効果を自己組織化モデルによって把握するものである。本研究で特長的なことは、集落崩壊が言われる地方部において日常的に介護を必要とせずに自立した生活ができる社会(健康長寿社会)を形成するため、例えば、積雪寒冷地の農山村(畑作・林業)の人々が近接地方都市に2地域居住するなどの効果を把握する点にある。 研究初年度において、まず、分析デ-タの整備ができた点が、達成度が高い理由である。次に、広域生活圏における都市と農村機能との同時消費の形態を理論的にモデル化することに、ある程度の目途をつけられた点が評価できる。具体的には、都市に生活しながら農村の効用も享受するという新たな消費の技術をモデル化した。例えば、親が都市で働き子供が農村に通学する場合、家族全体の効用は、子供によって新たに増加したメニューを親が消費する行動と捉えることが出来る。都市において農村の効用も享受するという新たな消費の技術に対しては、距離の概念が含まれてくるため、理論式は当然ながら都市の効用と農村の効用それぞれを単純に足し合わせることで求まる関数ではない。この部分に、新しいモデルの提案と簡単なモデル構築を行い、現象再現性がアルモデルになっていることが確認できたため、研究全体として、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降は、①都市と農村機能の同時消費による世帯・コミュニテイの生活質向上をモデル化を発展させるとともに、②自己組織化モデルを用いて、広域生活圏を構成する都市と農村の階層原理をモデル化し、地方部を対象とした国土管理上の施策の有効性を把握する。 ①に関しては、都市と農村機能の同時消費による世帯・コミュニテイの生活質向上モデルを完成させる。数集落の面接調査を行うとともに、異質性を表すモデルが必要な場合、これを構築して、都市と農村機能の同時消費構造を把握する。 ②に関しては、階層原理のモデルの改良を行う。モデルの改良点は2つある。1つは、研究の初年度では、仮想デ-タを用いて自己組織化モデルを完成させるが、27年度では、実デ-タを用いた分析となる。他の1つは、第一層目である「世帯・コミュニティ」と第二層目である「生活圏域」という階層構造設定の妥当性を検討して、中間層の導入や階層構造の除去を試みて現状再現性の高いモデルとする。また、生活圏域を対象とした国土管理施策の有効性の検討を行う。ここでは、構築した自己組織化モデルを用いて、生活施設配置とアクセシビリティを政策変数に取り上げて、生活圏の定住・交流人口の変化を把握し、施策効果とその発現速度から施策の有効性を評価する。アクセシビリティについては、本研究で重要な位置づけを占める近接性指標を導入する。また、生活圏域では、定住人口の定着を目指した地域づくりの視点だけでなく、「地方部の新しい価値観による市場形成」により、交流人口を獲得していくことが重要である。具体的には、観光はもとより、農場の環境を活かしたグリ-ンツ-リズムなどの施策効果(健康長寿社会にも繋がると考えている)についても、モデルでシミュレ-ションしていく。
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