本研究は、①地方部の生活圏域の類型を行うとともに、②都市と農村機能の同時消費による世帯・コミュニテイの生活質向上をモデル化し、③施設再配置と交通網維持管理による生活圏域の健康長寿施策の効果を把握したものである。 研究の最終年度は、まず、都市と農村機能の同時消費による世帯・コミュニテイの生活質向上モデル構築の完成を行った。モデルの特徴は、都市の効用と農村の効用をディクシット=スティグリッツのモデルを用いて定式化したことである。 次に、地方部の生活圏域における健康長寿施策の効果を把握した。本研究では、健康長寿施策として「地方部で共働きをしている夫婦を想定し、同じ町の郊外部に夫婦(母親)の両親が居住して孫の世話をする」という地方部の新しい価値観による居住地選択を提案し、その効果を計測するモデルを構築した。三世代近接居住を考え、夫婦とその(母親)両親との居住地選択に着目し、家計の選好のばらつきだけではなく、社会経済指標のばらつきも考慮した家計の行動選択モデルを構築することにより、働く女性への補助政策と出生率の関係をシミュレ-ションできた。 最後に、施設再配置と交通網維持管理として地方部の子育て環境の向上について検討した。具体的には、2時点における世帯マイクロデータから子育て世帯が増加したゾーンを求め、子育て世帯が増加する要因を分析した。分析の結果、居住する建物の築年数が若いほど、小学校・商業施設までの距離が近いほど子育て世帯が増加することが明らかとなった。これにより、三世代近接居住型の健康長寿社会を形成するための広域地方生活圏における機能・基盤の整備方策を整理でき、地域交流拠点形成方法の一案を定量的に示せた。
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