研究課題/領域番号 |
26420510
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
大窪 和明 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (50546744)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 静脈物流 / 入札市場 / ペットボトル |
研究実績の概要 |
本年度は,対象地域を拡大し,日本全国の自治体とリサイクル事業者のペットボトルリサイクルの入札市場を対象に構造推定を実施した.リサイクル事業者の入札行動をシミュレーションするときの計算負荷を軽減するために,ネットワーク科学の分野で開発されたコミュニティ抽出法を用いて,取引の関係性が強い事業者と自治体を抽出し,構造推定を適用した.コミュニティの抽出結果から,空間的に離れている自治体と事業者との間も取引が行われており,取引する年度に応じて各コミュニティに含まれる自治体が異なることがわかった.特に,落札後の契約期間が1年間だった平成24年度に比べて,契約期間が半年間に短縮された平成26年度に顕著な違いが見られた.すなわち平成24年度は遠く離れた自治体に対しても落札しているリサイクル事業者が多く見られたのに比べて,平成26年度には比較的,近隣の自治体と事業者との間で取引が行われている傾向が見られた. コミュニティ抽出法を適用した結果として得られたコミュニティの中から,埼玉県内の自治体を含むコミュニティに対して,シミュレーションを用いた構造推定手法を適用し,リサイクル事業者の入札額に影響をもたらす要因を調べた.その結果,平成24年度は距離が長くなるほど,入札額が低くなる傾向が見られた.その一方で,企業規模が大きくなるほど入札額が高くなる傾向があり,規模の経済の存在によってリサイクル処理が効率化されている可能性が示唆された.また,平成26年度の推定結果からは,契約量が大きくなる自治体ほどより高い入札額が提示されている傾向が見られた.これは,契約期間の短縮により,平均的な契約量が減少したため、より大きな契約量を提示する自治体の魅力が高まっていたものと思われる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,研究目的および研究実施方法に記した事項に関して成果が得られた.すなわち,リサイクル事業者の構造推定モデルから,リサイクル事業者の企業規模,事業者と自治体との距離,リサイクル処理量の不確実性といった要因が入札額にもたらす影響を定量的に評価することができた.さらに,コミュニティ抽出法を活用し,推定対象を限定することによって,計算負荷を低減することができた.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画踊り,平成28年度も当初の計画にしたがって研究を進める予定である.これまでの実証研究の成果から,リサイクル事業者の企業規模,自治体との距離,リサイクル処理量の不確実性といった要因が入札額に影響していることが判明した.これらの要因を考慮して,リサイクル事業者の入札行動モデルを提案し,代表的な入札方式の下での自治体(売り手)の収益,リサイクル事業者の利潤を分析し,社会的な費用を最小にするような入札方式を提案する.さらに,これらの成果を下に,研究のとりまとめを行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年2月にアメリカ合衆国ノースカロライナ大学で開催されたワークショップ “the second Workshop on Environmentally Sustainable Supply Chain Management for Early-Career Faculty”に論文を投稿し,発表のための旅費としての予算を確保したがリジェクトされたため参加できず,旅費として使用することができなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度の6月12日から15日にかけて開催される国際会議"INFORMS international conference"の旅費として使用する予定である.2016年2月に発表申し込みを完了しており,2016年5月の段階でプログラムも確定し,研究発表を行う予定である.
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