研究課題/領域番号 |
26420512
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 潔司 京都大学, 経営学研究科, 教授 (50115846)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 災害 / 危機管理 / メタ基準 / 正統化 |
研究実績の概要 |
自然災害時における意思決定は,通常の意思決定モードとは異なり,厳しい時間制約・情報制約の下で実施することが要請される.わが国の過去の災害において、意思決定の遅れや不十分な状況判断が被害の拡大をもたらした事例に関しては枚挙に暇がない。その一方で、危機的状況における意思決定を正統化するための規範原理に関してはほとんど研究の蓄積が存在していない。 自然災害によって危機的事態が生起した場合,意思決定者には通常時とは異なる意思決定の判断基準を採用することが求められる.自然災害に関わる危機に対処する上では,対象地域における状況変化に合せて通常時における判断基準(J基準と呼ぶ)を改定する必要があるが,メタ意思決定は,こうしたJ基準の改訂に関わる高次の判断を意味する。このとき,「危機的状態と対応して意思決定の判断基準を変更するための判断基準として何が妥当であるか」という高次の判断基準(メタ原則)に関わる問いが生じる.以上の問題意識に基づき,平成26年度では,危機管理に関わる意思決定の判断基準を選択するための規範原理について考察した.特に,関係者間の諸討議を統制する高次の討議(メタ討議)の役割に着目し,メタ討議によって,意思決定の判断基準の改訂を正統化する理論的枠組みについて考察した. 本研究では,高次の判断基準として,「正統化された信念によるメタ判断基準(MJ基準と呼ぶ)」("legitimized-belief" meta-judgment-guides)を提案した。MJ基準に基づけば「ある事実に対する認識者の信念は,その信念がその時点で認識者が有している証拠と整合している場合に限り,その認識者において正当化される」ことを明らかにした。以上のメタ判断基準に基づき,2000年の有珠山噴火時の事象を対象とした規範的意思決定について分析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度では,危機管理に関わる意思決定の判断基準を選択するための規範原理について考察することを目的としていた.その判断基準として,「正統化された信念によるメタ判断基準(MJ基準と呼ぶ)」を理論的に導いており,当初の目的を達成している.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降は,メタ意思決定のために不可欠な「状態が危機的状況に移行しようとしているか否かに関する判断情報を提示するためのモニタリング方法論」、「意思決定者が自分の権限の範囲の中で調達可能な人員、資材供給能力を見極めるための地域キャパシティの把握」のための分析モデルを提案する.最終的に2000年に発生した有珠山噴火災害を事例として、イベント分析手法を用いて国、県、市町村、組織、企業、住民らの行動の推移を経年的に記述する。 研究計画の変更あるいは遂行上の課題は特にない.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度では,情報収集のために謝金支払いを予定していたが,結果的に謝金を支払うような作業なく情報を入手できた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度においても引き続き追加の情報収集が必要になる.当該金額は引き続き謝金として使用する予定である.
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