最終年度は前年度に引き続き,多地域応用一般均衡モデルの開発ならびに改善を行った.既に前年度までに運賃が外生的に与えられる外生モデルと,内生的に変化する内生モデルの2通りのモデルの枠組みは構築しており,曖昧さを残していた部分の精緻化を進めるとともに,パラメータのキャリブレーションの精度も向上させた.特に,地域間輸送企業の投入構造と生産,およびその価格の相互の整合性を確保するため,地域間輸送企業の生産である輸送活動量と輸送需要を一致させ,単位輸送活動量あたりの価格,すなわち運賃の根拠となる費用構造における物理量と金額の関係を明確に表現するとともに,各種資料から具体的な数値を得て,パラメータのキャリブレーションを行った. 本研究でモデルの開発を行った目的は,港湾政策や海運政策の評価を行うためであった.従って,特定の政策により変化する変数,いわゆる政策変数をモデル中で表現することも目指したが,パラメータキャリブレーションのためのデータが得られないなどの困難があったため,より汎用的なモデル開発を目指した.各種政策が直接間接に地域間輸送企業の生産に影響を与えていると仮定し,地域間輸送企業の生産構造や費用構造にかかるパラメータを変化させることにより,政策の影響を表現することとした.港湾整備政策,内航フィーダーへの補助,カボタージュ規制緩和などの港湾政策,海運政策がもたらす地域間輸送企業の生産性向上効果や投入構造変化をモデル中で表現するための方法を提案するとともに,船舶大型化や輸送企業間の連携の進展等の輸送市場変化も分析可能であることを示した.
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