研究課題/領域番号 |
26420517
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
松見 吉晴 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00135667)
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研究分担者 |
羅 貞一 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20612617)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 防災マップづくり / 避難シミュレーション / 住民の防災意識 / 地域防災活動 / 住民参加型防災活動 / 災害時要援護者 / 四面会議システム |
研究実績の概要 |
本研究では,地域防災活動の仕組みづくりに関する企画モデルの構築を目的に,平成26年度において住民自身による地域の防災に関わるリスク認識を高めるための「防災マップづくりワークショップ」,及び災害時要援護者の避難方法を地域で考案するための支援ツールとして「車両避難も含めた避難シミュレーションの構築」について実施し,その効用と次年度以降の課題を明らかにした. 防災マップづくりワークショップでは,境港市上道地区を対象に防災マップの意義について学習会を行った後,住民と共に地域の特性・脆弱性などを調べ,地域専用の防災マップの作成に取り組んだ.ワークショップを通じて,防災対策の立案や住民の合意形成など大きな効用が確認された.今後の課題として,住民自ら防災マップを定期的に更新し,防災教育や訓練などに利活用する仕組みづくりの必要性が確認された. 地域防災力は住民の防災意識と相関性が高いことから,住民に防災意識の向上に及ぼす普段からの防災に対する行動や考え方の影響を明らかにするため,自然災害発生時の行動と地域の居住環境,住民の災害に対する意識や考え方,個人属性に関するアンケート調査をもとに,共分散構造分析よりそれぞれの因果関係を検討した.本分析は,平成27年度に防災マップづくりを実施予定の鳥取県西伯郡大山町御来屋地区の493世帯を対象に実施した.分析結果より,地域内のコミュニケーションを密にとることが地域防災力の向上につながることが明らかになった.また,同地区を対象とした車両避難も含めた避難シミュレーションでは,マルチエージェントシステムを利用して構築し,最適な避難経路の選定,地区内における車両避難時の許容台数について明らかにした. これらの結果もとに平成27年度,当該地域で防災マップづくりワークショップを実施し,防災マップや避難シミュレーションが住民の防災意識向上に対する効果を検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)手作り防災マップ作成のためのワークショップの企画モデル化に関する研究に関しては,防災マップづくりワークショップの企画モデルの構築及び実施した結果,企画モデルの有効性については,境港市上道地区で確認ができた.しかし,企画モデルを汎用性へ展開するために必要な他の自治他での検証については,自治体との交渉に時間を要してできなかったためである.「やや遅れている」 (2)車両による避難誘導の有効性の検討に関する研究に関しては,おおむね計画どおり進展できている.なお,ワークショップ等で住民が避難行動が検討できるように,避難シミュレーションシステムにおける避難条件等の設定内容を改変できる入力インターフェースは構築途中である.「おおむね順調に進展している」 (3)住民参加型防災活動計画の仕組みづくりに関する研究に関しては,地域コミュニティの多様な主体(自治会・自主防災会・学校・婦人会など)が参加する「参加型防災計画づくりに関するワークショップ」のデザインと企画モデルの初案として,手作り防災マップ作成のためのワークショップを企画,実施し,その問題点を確認した.また,地域の自助・共助に基づく地域防災の向上化のための持続可能なプロセスの解明については,共分散構造分析より,地域防災力の向上に対して地域内のコミュニケーションを密にとることを明らかにした.「おおむね順調に進展している」
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今後の研究の推進方策 |
「(1)手作り防災マップ活動研究」に関しては,地域特性に依存しない汎用的な防災マップづくり活動のマニュアル化を進める.また「(2)車両による避難誘導の有効性に関する研究」では,システムの改良を行いつつ,国や県から提供される津波と洪水氾濫を対象とする浸水エリアの時空間資料と対象地区の避難所要時間に関する算定結果をもとに当該地域における車両避難として利用できる許容車両台数を導出する.一方,「住民参加型防災活動計画に関する仕組みづくり」に関しては,上記のデザイン後に鳥取県における複数の地域コミュニティの実フィールドに発信・共有して,住民によるPDCAサイクルを加味した四面会議システム・ワークショップの汎用的なモデル構築を目指して改善していく.その際,従来の四面会議システムに関する研究と単なる学術的な比較検討にとどまらず,地域コミュニティを支える住民組織の交流をベースとした実践的な研究を通じて,これまで地域コミュニティで蓄積されてきた知識・智慧の「相互共有の知識開発」や「場づくり」のテクノロジーが見える仕組みづくりを図り,最終的に住民によるPDCAサイクルが可能な住民参加型防災活動計画の仕組みづくりの企画モデル化を進めていく計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
避難シミュレーションシステムにおける避難条件等の設定内容がワークショップ等で住民によって避難行動が検討できるように改変できる入力インターフェースの開発を,研究開始当初から既存のPCで一部代用して検討していたが,そのインターフェースの開発が研究が遅れたことにより,予算計上していた避難行動シミュレーション用コンピュータの購入を次年度(平成27年度)に先延ばししたことによる.また,地域防災活動のためのワークショップの企画モデルの汎用性の検討について,他の自治他との交渉に時間を要してできなかったため,アンケートに係わる経費が次年度へ繰り越すことになった.
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次年度使用額の使用計画 |
上記の避難行動に関する条件設定が改変できる入力インターフェース開発の目処が立ったため,対象地域の避難車両台数だけでなく地域内の道路における通常の交通量も取り込むことができるPC(メモリー容量6GB以上の64ビットマシン)を購入し,ワークショップにおいて避難所の新設や避難経路の閉塞,地域防災の脆弱性の対策案による避難行動の変化状況を地域住民に対してリアルタイムで提供するデータベースを構築する. 前年度に考案したワークショップの企画モデルの汎用性を検討するため,鳥取県内の複数の自治体と連携をとり,ワークショップの開催とその前後の住民の変化を把握するためのアンケート調査の回収用の郵送料として使用する.
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