研究課題/領域番号 |
26420524
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
塚口 博司 立命館大学, 理工学部, 教授 (80127258)
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研究分担者 |
安 隆浩 立命館大学, 理工学部, 特任助教 (20525505)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歩行者サインシステム / 迷い行動 / 経路選択行動 / 歴史公園 |
研究実績の概要 |
本研究は、サインシステムの整備による来訪者の行動変化について、回遊できる観光スポット数の増加、および迷い行動の減少という視点から捉えることとし、特に迷い行動の特徴を来訪者の経路選択行動によって把握するとともに、これを用いて、サインシステムの効果的な整備について論じることを目的としている。 この目的を達成するために、研究代表者らは本研究が開始される以前(25年度)に、奈良県と共同で奈良公園における来訪者に対する行動調査を実施していた。26年度には、まず既存調査結果を用いて来訪者が目的施設を訪問する際の利用経路図を作成し、経路選択モデル構築のためのデータ整備および基礎分析を行った。その結果、来訪者が迷うことが多かった地点を利用経路上で明らかにし、迷い行動の発生率が高い地点を明確にすることができた。奈良公園における歩行者サインシステムの改善は、現時点では史跡区域(東大寺や春日大社等の所有地)等を除く区域で実施されているが、上記の迷い行動発生率の高い区域は、史跡区域等のサイン改善が十分でない区域であることを明らかにした。 次に、迷い行動と経路選択行動の関係をさらに詳しく分析するために実態調査を実施した。この調査は、上記の分析で明らかとなったサイン改善が十分でない区域を対象とし、社会実験の形式で実施した。社会実験形式の調査は当初は予定されていなかったが、社会実験が可能となったので、実施することにした。具体的には、迷い行動が発生している地点およびその周辺に仮設の案内サインを設置し、来訪者の挙動を分析するとともに、仮設サインに対する意識も調べた。そして、それらの結果に基づいて、サインの設置効果について検討した。これにより、局所的ではあるが効果的なサイン設置方法について検討することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は奈良公園を来訪する観光客全体に対して、訪問施設および当該施設への経路、ならびにその際に生じた迷い行動について、公園全体に対する実態調査を行う予定であった。しかしながら25年度に事前調査を実施して以来、奈良公園における新たなサイン整備が実施されていないことが明らかとなった。そこで、25年度に実施された調査がほとんど分析されていないことも考慮して、まず25年度について詳細に分析することとした。その上で、奈良公園全体を対象とするのではなく、上記の詳細分析の結果より鮮明となった迷い行動の発生率が高い区域において、仮設サインの設置による社会実験を実施し、被験者の行動変化を把握することとした。このように、若干の計画変更があったものの、研究計画に示した研究目的の達成に向かって適切に遂行できていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的はサインシステムの改善の影響を「迷い行動」という負の行動に注目し、サインシステムの効果的な整備について検討することを目指している。この負の行動に焦点を当てるという研究方針は本研究の特徴である。 本研究では、サインシステムの改良に伴って経路選択行動が効率的に行われ、その結果として訪問される観光スポットが増加するが、その一方で、新たな観光スポットの訪問は迷い行動を発生させる原因ともなるとの仮設を設定し、これを検証していく。そして、それを通して奈良公園におけるサインシステムの高度化について論じることにしたい。なお、奈良公園のサインシステムは奈良県が事業を行っている区域だけでなく、先に述べた史跡区域等においては改善が行われていないか、あるいは十分でない区域が存在している。そこで、これらに区域における適切なサイン整備についても提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は奈良県が実施している歩行者サイン整備の動向を確認しつつ遂行している。26年度にも新たなサイン整備が実施されるとの認識の下で研究を進める予定であったが、26年度の新たな整備はほとんど見られなかった。そこで、研究代表者らが25年度に実施した調査結果を用いて、「迷い行動」という視点から詳細に分析することにした。 また、奈良県との協議によって、迷い行動が発生しやすい箇所において仮設のサインボードを設置して迷い行動に関する実験を行うことが可能となったので、調査方法を一部変更した。この実験に当たっての仮設サインボードの設置に関しては、奈良県の負担で実施することができた。 以上の理由から、使用額が減少することとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度に新たなサイン整備が実施されれば、それに応じた調査を実施する。 研究代表者らは、来訪者が迷いやすい区域はかなり限定されていることを把握している。26年度にはそのうちの1区域で実験を実施したが、27年度には他の区域で迷い行動に関する調査を実施する。 そして、迷い行動の発生状況とそれを削減するための方策に関する検討を研究計画通りに実施する予定である。
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