分散型生活排水処理システムとしてわが国で普及している浄化槽の,地域水環境への影響を明らかにするため,実地調査を中心とした研究を行った。 初年度は,浄化槽整備地区において大腸菌など複数の糞便汚染指標微生物(指標微生物)を含む水質・水文調査から,水中の指標微生物の存在特徴を季節性も含め明かにした。同時に水路内の底質の調査から,浄化槽放流先底質において,特に粒径の小さい分画に大腸菌が含まれており,冬季により多く存在する等の実態を明らかにした。 2年目は,前年度の調査に加え降雨時連続調査を複数回実施し,指標微生物の平水時と降雨増水時の水路内での存在実態の違いや降雨中期間中の流出の特徴を検討し,降雨による流量増加時に指標微生物濃度は上昇するなど,面源汚染の特徴を明確にした。降雨中浄化槽利用区内暗渠から常に高濃度で指標微生物が流出しており,暗渠内に堆積する底質中の指標微生物が高いことから水路堆積物の流出による影響が明らかになった。特に大腸菌は他の指標微生物と比べ増加の程度が大きく,降雨時調査結果から,浄化槽整備地区からの大腸菌流出負荷量は都市区と比べて晴天時は9倍程度大きいと試算された。 最終年度は,流出に大きく関係する水路内堆積物中の微生物に関する詳細な調査を行い,暗渠中に接続先開水路の底泥より1オーダー程度高く含まれる等,排出源に近い底質に高濃度で指標微生物が存在し,降雨初期に流出していることも分かった。水路中の抽水植物や,特に水路壁面付着微生物膜には底質より数オーダー高く指標微生物を保持できることが分かった。結果から試算した水路中の各指標微生物保持量は,抽水植物の有無による影響はほとんどないが,微生物膜の有無で大きく影響されることが分かった。特に排出口付近の微生物膜の形成抑制は,水路全体での指標微生物保持量の減少が期待され,下流への負荷流出削減につながると考えられた。
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