研究課題/領域番号 |
26420532
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
日下 英史 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (60234415)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 放射性セシウム / ゼオライト / 粘土鉱物 / マイクロバブル / 浮選 |
研究実績の概要 |
はじめに: 福島第一原子力発電所の事故により、放射性物質が拡散され環境の水質を汚染しており、その対策が迫られている。現在、放射性Cs汚染水の除染方法として、Cs吸着剤微粒子によってCsを吸着処理する方法が行われているが、これらナノメートルサイズの吸着剤微粒子を回収することは困難とされており、これを迅速に回収する手法の開発が望まれている。本研究では、吸着剤としてゼオライト微粉砕物を選定し、マイクロバブル浮選(MBF)により回収することを目指すと共に、その浮遊挙動を界面化学的に検討した。 実験: 実験では、市販ゼオライト粉末を用いた。-5マイクロメートルに粉砕したものを濃塩酸で洗浄後濾過・乾燥したものをCs吸着剤として用いた。ゼータ電位測定は、顕微鏡電気泳動法より測定した。MBF試験には直径50 mm、高さ500 mmの円筒形アクリル製分離セルを有するMBF浮選試験器を用い、試験器の底部に設置した孔径0.5マイクロメートルのSPG膜から空気を75 ml/minで導入してマイクロバブル浮選を行った。 結果及び考察: ゼオライトのゼータ電位について、pH 2~12の領域においてpHに関係なく負に帯電していることが確認できた。したがって、陽イオン性捕収剤であるドデシルアミン塩酸塩(DAC)を用いてMBFを試みたところ、DAC 30 ppmにおいてpH 2.4~12.2の広い範囲において回収率は85~99 %でほぼ一定であったが、DAC 5、10 ppmにおいては高pH領域において浮上率が低下する傾向が確認された。ドデシルアンモニウムイオンは12付近のpH領域においては非解離のドデシルアミン分子の状態で存在し、捕収効果が消失するためと考えらるが、高濃度のDACの高pH域においても高回収率を示す原因については、捕収剤の静電的な相互作用以外の相互作用が働いているためと推察された。以上の傾向はCsイオンを添加しても何ら変化が無く、Cs吸着による影響はほとんど無いことが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、主に粘土系鉱物の吸着剤を用いた浮選試験とその機構解明を行った。平成27年度からはフェロシアン化金属塩を用いた実験に、当初目的通りに移行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、前年度の結果を踏まえ、フォロシアン化金属塩系ナノ粒子吸着剤の界面動電学的特性とマイクロバブル浮選(MBF)浮上特性の相関性の把握を行う。粘土系Cs吸着剤よりもさらに数十ナノメートルレベルに微細化したフェロシアン化金属系(フェロシアン化鉄=プルシアンブルー、フェロシアン化ニッケル、フェロシアン化銅など)のナノ粒子吸着剤のいくつかを選定し、平成26年度に調査を行った粘土系Cs吸着剤の浮上特性をもとに、ゼータ電位測定とその介在物(無機塩類)の影響についての調査を行い、浮選剤(捕収剤など)の吸着メカニズムについて検討を行う。同時に、これら試薬系におけるMBF試験を行い、ナノ粒子吸着剤のMBF浮上分離のための最適条件を求めていくことにより、MBFによる分離機構について考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費が50%程度、その他経費の支出が少額であったのに対し、人件費・謝金が12万円ほど超過し、差引で14万円ほどの剰余金が発生したため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の物品費の購入に使用予定である。
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