研究課題/領域番号 |
26420533
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
三浦 大介 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (50281241)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 高勾配磁気分離 / 磁性吸着剤 / 磁気アルキメデス効果 |
研究実績の概要 |
新規磁性吸着剤の開発と高勾配磁気分離による水質浄化及び有価資源の回収について、炭素系廃棄物として籾殻に着目し、炭化と賦活処理、及び坦磁処理を行うことによりメソ孔と強磁性を有する新規磁性吸着剤の籾殻磁性活性炭の作製(特許申請済み)に成功しているが、27年度は新たに開発した0.5Tのネオジ系永久磁石を用いたロータリー型高勾配磁気分離装置を用い、その磁気分離特性評価を実施した。その結果、0.5T、230mL/sの流速で磁気捕獲率は99.4%を達成した。さらに電磁界シミュレーションを用い、磁性細線に捕獲される磁性粒子の軌道運動を解析し、実験データとの比較検討を開始した。また、有価資源回収に関する吸着剤として継続研究中のイオン交換吸着剤である磁性ゼオライトはその作製方法を改良し、共沈法にバルク化熱処理を組み合わせ、粒径と磁性の大きい磁性ゼオライトの作製に成功した。その結果2T、流速0.5m/sの高勾配磁気分離により99.8%の捕獲率を達成した。一方、磁気アルキメデス効果による有価資源回収のための基礎研究に関しては、昨年度に引き続き、電子機器等のいわゆる都市鉱山からの貴金属類、電子基盤粉砕物等から選択的に有価資源を分離・回収する基礎研究を実施した。実験は10Tの常温ボア超伝導マグネットを使用し、常磁性媒質として塩化マンガン水溶液を選択して、CCDカメラとプリズムによって物質の浮上観察を行なった。電子基板粉砕品の浮上実験において、粉砕した電子基板粉末から金のみを選択的に分離・回収することに成功した。さらにマグネット内に強磁性体である鉄を有効に配置した高勾配磁場中での磁気アルキメデス効果を新たに提案し、より磁気力を強くすることで金、プラチナ、パラジウムを一度に分離できることがシミュレーション実験により明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上述した研究成果は概ね研究スケジュールに即しており、さらに付随する新展開として、①籾殻磁性活性炭が表面に負に帯電した固有官能基を持つ為にフミン酸だけでなく、有価金属イオンを吸着する可能性が高いことが判明し、現在吸着特性を評価していること、②坦磁処理の最適化により磁化の増大が可能なため、新開発の0.5Tのロータリー型永久磁石による高勾配磁気分離機で磁気分離が十分にできること。③磁気アルキメデス効果を増大させる為に、新たに磁性体を超伝導マグネット内部に挿入し、高勾配磁場下における「高勾配磁気アルキメデス効果法」を開発中で、その強さを示すパラメーターであるB×dB/dzを従来の5倍以上増加させることがシミュレーション実験で明らかになったことなどがあり、当初の計画以上の成果が出ているため。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度であるので、研究の総仕上げとして以下の点に着目した研究を行なう。 ①特許出願中の籾殻磁性活性炭の吸着特性の詳細な調査。27年度末に元素定量評価機器として当研究室でICP発光分光計を購入した。これを用い吸着可能な有害金属イオン、有価金属イオン等、様々な元素の吸着特性の詳細な評価を行う。②新開発の0.5Tのロータリー型永久磁石による高勾配磁気分離機の磁気分離性能の詳細な実験評価、および磁気分離シュミレーションとの比較検討を行い、さらに高性能な永久磁石を用いたロータリー型高勾配磁気分離装置の設計を行う。③磁性ゼオライトの吸着性能を①と同様に詳細に調査する。④高勾配磁気アルキメデス効果を用い、通常の分離方法では不可能なたんぱく質等の分離実験を行う。また固体有価物の分離方法の最終検討を行い、高勾配磁気アルキメデス法による物質の分離手法を確立する。 以上の成果により新しい磁気分離手法のさらなる展開を図る。
|