研究課題/領域番号 |
26420534
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
橋本 温 県立広島大学, 生命環境学部, 准教授 (30332068)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 嫌気性芽胞菌 / ノロウイルス / PMMoV / 大腸菌 |
研究実績の概要 |
広島湾の5カ所の定点において、毎月の定期サンプリングを実施し、嫌気性芽胞菌、ノロウイルス、大腸菌およびトウガラシ紫斑ウイルス(PMMoV)を計測した。 嫌気性芽胞菌とPMMoVは、どの水域、採水地点においてもすべての試料で1Lの検査で検出され、大腸菌の検出されない試料においてもその存在が確認された。特に、ノロウイルス流行期(冬季)においては、ノロウイルス(Nov GII)遺伝子が多数検出される試料において、大腸菌が検出されないケースがあり、大腸菌の指標としての問題点が示された。 ノロウイルスと指標微生物の濃度の相関分析では、PMMoVと嫌気性芽胞菌の濃度はノロウイルスと有意な相関が認められ、特にPMMoVとの間に高い相関が認められた。一方で、大腸菌とノロウイルスの間には有意な相関は認められなかった。 海域の糞便汚染および糞便-経口感染する病原微生物の指標として、従来から大腸菌が用いられてきたが、このようにノロウイルスを例に考えると、大腸菌ではその挙動を十分に把握することは難しく、海域の糞便汚染やノロウイルス等の腸管系ウイルスを考慮した代替指標として、PMMoVや嫌気性芽胞菌の有用性が示された。特に、嫌気性芽胞菌については、ウイルスの検査と比較して、その培養や検出・定量方法の容易さから、海域の糞便汚染等を評価するための優れた代替指標としての可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海域の調査が十分に実施され、その結果も指標としての有効性の評価に耐えうる状況であった。これは、研究計画で当初計画した内容に相当するものであり、計画通り順調に進捗していると考えられる。したがって、「おおむね順調に進展している」と自己判定した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は海域の調査をさらに進め、嫌気性芽胞菌や大腸菌濃度の年間での変動やウイルスとの相関のデータをさらに得ることで、より正確な関係性を評価する。 さらに、分離される嫌気性芽胞菌の遺伝子解析を行うことで、糞便汚染のソースを推定する。すなわち、cpe遺伝子やcpa遺伝子の保有やその変異を追うことで、汚染源のソースであるヒト糞便由来あるいは家畜系排水由来の識別を行うことの可能性について検討する。特にcpe遺伝子については、プラスミド性の遺伝子が存在することから、環境中での脱落等の挙動について評価し、その糞便汚染指標としての意義を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
経理上の端数が生じたことで、325円を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の予算と併せて、研究計画に組み込んで適正に使用する。
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