研究実績の概要 |
平成27年度は,下水処理水に含まれる臭気成分の確認と各種処理における低減効果について調べた。まず,GC-MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)とGC-O(におい嗅ぎガスクロマトグラフ)とを組み合わせた装置の調整を行い,下水処理水に含まれる臭気成分をマイクロ固相抽出法によって装置に導入した。その結果,敏感な被験者がにおい嗅ぎをおこなった場合,約10の異なるリテンションタイムの位置に臭気成分が存在することがわかり,そのうちのひとつが2,4,6-TCAであることが確かめられた。また,比較的,鈍感な被験者がにおい嗅ぎをした場合でも,2,4,6-TCAは明確に認識できる場合が多く,2,4,6-TCAが下水処理水の臭気に大きな寄与をしているという平成26年度までの仮定の信頼性が向上した。また,下水処理水の高度処理法としてよく用いられるオゾン処理や活性炭処理による2,4,6-TCAの除去性を調べた。オゾン処理においては,純水溶液環境でも下水処理水環境でも,2,4,6-TCAはよく除去され,代表的カビ臭物質であるGeosminが純水でほとんど反応せず下水処理水系で反応しやすいのとは対照的であった。また,活性炭への吸着はGeosminよりも2,4,6-TCAの方が吸着しやすいことがわかった。また,オゾン処理でも活性炭処理でも,臭気の除去と2,4,6-TCAの除去はほぼ並行して生じた。これまでの下水処理水や河川での実地調査結果と合わせて,本年度の検討により,下水処理水の臭気成分としての2,4,6-TCAの重要性が確かめられた。
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