研究課題/領域番号 |
26420540
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
島崎 大 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 上席主任研究官 (60322046)
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研究分担者 |
秋葉 道宏 国立保健医療科学院, その他部局等, 統括研究官 (00159336)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エンドトキシン / 医療用水 / 水道 / 浄水処理 / 従属栄養細菌 |
研究実績の概要 |
エンドトキシンは血液を介して体内に入ると炎症やショックなどの症状を起こすことが知られており、医療現場における水質管理に特段の注意が求められている。昨年度に引き続き国内の9水道事業体から原水(地表水・地下水)・処理工程水・浄水試料を、3医療施設から専用水道(地下水)および公共水道の水試料を入手し、エンドトキシン(ET)活性値(遊離ETおよび総ET)と従属栄養細菌数(HPC)の存在状況を調べた。 このうち、高度浄水処理を有する3浄水場において、原水のET活性値は37.6~91.0EU/mLであり、水源水質の違いによるものと推測された。浄水では0.8~24.3EU/mLであり、原水に対する減少率は70.7~98.5%と最大で約28%の差が生じていた。遊離ET比率は原水0.44~0.55、浄水0.62~0.95と浄水場間で差が生じていた。 昨年度の結果と共に、各処理工程における除去性を比較したところ、酸化消毒処理のうち、塩素処理は前塩素>中間塩素>後塩素、オゾン処理は、中オゾン>後オゾンの順に低減率が高く、また、オゾン処理に比べ塩素処理がET活性値の低減に寄与していることが示された。これらの除去性の差は、ETに対する各処理の作用機序の違いであることが考えられた。活性炭ろ過後はHPCの増加が確認され、ET活性値も上昇していた。結合ET活性値より遊離ET活性値の割合が高く検出されており、HPCの流出と共に活性炭槽内で抑留されていた浮遊性のETが流出していると考えられた。凝集沈澱および急速ろ過は、ET活性値の低減に最も効果的であり、固液分離によりおおむね9割前後のET活性値は除去されていた。ただし、凝集沈澱処理では浄水場における除去率の差が大きく、原水中に存在する微生物の種類や存在量等の影響を受けているものと考えられた。また、高度浄水処理の最終段階に急速ろ過処理を行うことは、活性炭ろ過後にいったん上昇したETの低減に大いに効果的であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度も継続して国内の9浄水場および3医療施設からの採水調査への協力を得ることができ、各施設における原水・処理工程水・浄水試料・給水末端での採水調査を夏季・秋季および冬季に実施できた。一部の高度浄水処理を用いている浄水場を対象として、連続する2日間の測定による精密調査を実施し、さらに、通常処理の浄水場を対象として、凝集沈殿・砂ろ過処理および塩素処理がエンドトシキン活性の挙動に及ぼす影響に注目した調査を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、夏季および冬季において国内の9浄水場および3医療施設からの採水調査を継続する。特に、夏季において特徴的なエンドトキシン活性値の上昇や低下が観察された場合には、当該の浄水場などにおいて調査の頻度や採水箇所数を増やし、再調査を行うことを検討する。 これに加えて、秋季を中心に、塩素処理およびオゾン処理の実内実験による水道原水および工程水中のエンドトキシン活性生成能の評価を行う。具体的には、エンドトキシン活性値が高い、あるいは従属栄養細菌数が多い浄水場の原水および処理工程水を2~3カ所採水し、実際の浄水処理に近い条件下でのバッチ処理実験により、エンドトキシン活性生成能の挙動を把握する。可能であれば、紫外線照射処理によるエンドトキシン活性生成能の評価も行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
実態調査における測定試薬や実験消耗品の金額が想定の80%程度の金額で購入できたため、物品費を中心とした未使用額が生じた。また、人件費も実験作業補助者の作業工程の見直しにより、想定した時間よりも圧縮できた。一方で、医療機関の採水調査においては、当研究代表者の訪問による採水等が必要となったため、本年度の想定額よりも超過した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の実態調査において測定箇所数や測定回数を本年度より増やすことを計画している。具体的には、特徴的なエンドトキシン活性値の上昇や低下が観察された箇所を中心とした精密調査を実施する。
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