本研究では,国内外でその発生が危惧されている超巨大地震に備えて,超巨大地震へも適用可能かつばらつきを大幅に減少させた次世代の地震動評価式を開発すること,開発した評価式による地震ハザード・リスク評価を行い,その工学的な影響度を評価することを目的としている。 平成28年度は研究の最終年度として,平成27年度までに構築したデータベースに基づき,パラメトリックモデル及びノンパラメトリックモデルの地震動評価式を開発するとともに,地震ハザード評価を行った。具体的な検討内容は以下の通りである。 巨大地震を含む強震動データベースに対して通常のパラメトリックモデルによる地震動評価式を求めた。震源パラメータとしてMwと応力降下量,伝播経路パラメータとして震源距離(面震源に対しては等価震源距離)と火山フロント前弧・背弧側距離,地盤パラメータとして表層Vs30と基盤深さを用いた。並行して,東北日本のデータベースに対して深層学習によるNNモデルを構築した。震源パラメータはMwと震源位置,観測点パラメータとして観測点位置とVs30を与えた。NNモデルのばらつきは周波数によらず0.16程度となり,通常の方法で求めた地震動評価式(0.25-0.3程度)よりも小さい結果が得られた。ただし,NNモデルにおける面震源の扱いにはまだ検討が必要な結果となった。 2つのモデルで地震動評価結果を比較したところ,NNモデルの方が震源深さの違いや観測点固有の地盤増幅特性をより表現できるものの,周波数特性の変動が大きい傾向が見られた。総合して,NNモデルによりばらつきを減少させることは可能であるが,面震源での適用性及び安定性については引き続き検討が必要な結果となった。
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