近い将来問題になると考えられる大口径既存杭の処理に対し,これを積極的に再利用することで工期短縮,コスト削減,さらに資源の有効利用による環境負荷の低減ができる新しい建物基礎(杭頭絶縁基礎)を研究代表者らは提案している。その提案基礎を実現可能とするため,これまで実大に近い実験模型を実地盤に設置し地震観測を行ってきた。地震観測記録から,提案基礎が他の直接基礎や杭基礎に比べ地震時応答が低減できる原因として,構造物のロッキング動抑制が大きく影響していることが分かっている。 そのメカニズムを明らかにするため実験模型の計算モデルを作成し弾性領域サブストラクチャー法に基づく3次元有限要素法と薄層法によるシミュレーション解析を行った。その結果,以下のことが明らかになった。 提案基礎を直接基礎と比べた場合,薄層を介して剛性の高い杭が下にあるため構造物のロッキングが抑えられ,応答も小さくなる。 提案基礎の杭直上の薄層部分の剛性等の物性が構造物の応答に与える影響は小さい。 杭基礎については,杭と構造物が剛結されており地震時には構造物の慣性力の影響を受け杭頭付近は周辺地盤と異なる震動をし,杭と地盤の相対変位が生じる。その結果,地震を経験するたびに杭頭付近では周辺地盤との間に隙間が生じ,杭頭付近は突出杭に近い状態になる。それにより杭基礎の場合の構造物の地震時応答は大きくなる。一方で,提案基礎の場合,杭と構造物が絶縁されており構造物の水平慣性力が杭に伝わらないため,杭は地盤変形に追従する。そのため提案基礎では杭基礎での突出杭のような大きな応答は生じない。
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