研究課題/領域番号 |
26420545
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
寒野 善博 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 准教授 (10378812)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ロバスト性 / 冗長性 / 半正定値計画 / 混合整数計画 / 相補性条件 / ロバスト最適化 |
研究実績の概要 |
本研究課題の主題である,建築構造物の「ロバスト性」「冗長性」という概念は,簡単に言うと現実世界のさまざまな不確実性に対する抵抗力であり,構造物にとっての最悪シナリオと密接に関連する.そして,最悪シナリオは,ある種の最適化問題の解として定義される.本研究課題では,最適化問題の理論・解法の中核をなす双対性という数理的な道具を活用することで,建築構造物のロバスト性・冗長性を考慮した諸手法を展開することを目指している. 平成27年度は,主に二つの観点から研究を展開した.一つめは,ポテンシャルエネルギーの双対性である.この概念を平面骨組構造物やトラス構造物の最適設計問題に導入することにより,連続と離散のハイブリッド型定式化が可能となることを明らかにした.この定式化により,通常の連続最適化で現れる脆弱な構造要素を排除することが可能となり,最適設計解にロバスト性を付与できる.二つめは,外力の不確実性モデルに対する双対性である.この概念により,荷重のばらつきに対する構造物の頑強さを適切に評価することが可能になった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べたポテンシャルエネルギーへの双対性の導入により,種々の離散性の設計要件を考慮したトラス構造や平面骨組構造の最適化問題が大域的に解くことができる.提案した定式化は,既往のものと比べて,計算コストが格段に小さいことが実験的に示されている.また,通常の連続最適化で出現する脆弱な部材が排除される定式化であることから,今後,ロバストな構造物の設計法の確立にむけての重要な基礎ツールとなることが期待される. 次に,外力の不確実性モデルに対する双対性の導入により,シェイクダウン解析に対する新たな知見が得られた.シェイクダウン解析は,外力のばらつきに対する構造物のロバスト性を評価するために古くから用いられてきた手法であるが,双対性の視点からはそれ自体がロバスト最適化と捉えることができることを明らかにした.そして,この視点に立つことにより,von Misesの降伏条件下で楕円体型の外力モデルを仮定したとき,シェイクダウン荷重を求める手法を新たに開発した.このような自然な仮定の下でシェイクダウン荷重を求める手法は,これまでまったく知られていなかったため,本研究課題の成果の強い独自性とみなされると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
双対性にもとづくロバストな構造最適化問題の定式化は,主にトラス構造と平面骨組構造について展開されてきた.今後は,この定式化を,立体骨組構造やシェル構造などの多様な構造形式に展開することを目指す.一方,ロバスト性と並ぶ設計力学の重要な概念に,冗長性がある.今後は,構造要素の損傷に対する構造物の冗長性を保証する最適設計法を開発・展開する予定でる.
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次年度使用額が生じた理由 |
双対性の概念は,本研究課題にとって指導原理の役割を果たす.力学における双対性に関する主要な国際会議が,平成28年度に開催される.本研究課題の成果の発表と資料の収集の場としてその国際会議は不可欠な存在であると判断し,そのための参加登録費および旅費を平成28年度に支出するため次年度使用額が発生した次第である.
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次年度使用額の使用計画 |
この研究課題の主題であるロバスト性・冗長性の概念が研究されている分野は多岐に亘り,かつ,種々の方法論が盛んに研究されている.他分野の最新の研究成果を取り入れて本研究課題の研究をさらに推進するためにも,国内外の関連研究者と会い情報収集を行うことは重要である.そのための旅費や学会参加費として使用する計画である.
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