研究課題/領域番号 |
26420550
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
坂下 雅信 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50456802)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 耐震壁 / RC造 / 水平二方向載荷 / せん断破壊 / 面外方向載荷 |
研究実績の概要 |
高い剛性と強度を有し,耐震要素として広く利用されている鉄筋コンクリート造耐震壁の構造性能や損傷度を適切に評価するために,斜め方向(二方向)の水平地震力による面外変形を受ける耐震壁の地震時抵抗機構の解明を目的とし,せん断破壊が先行するように設計された耐震壁試験体を対象とした3次元有限要素解析を実施した。解析変数は,強制変位として与える面内方向水平変位に対する面外方向水平変位の比率とし,①面内載荷のみ,②面内変位1に対して面外変位を1.5倍,③面内変位1に対して面外変位を3.0倍とした3種類の載荷履歴の影響を検証した。モデル化に関しては,コンクリートは六面体要素で,鉄筋は柱主筋をトラス要素で,柱帯筋および壁筋は埋め込み鋼材要素でモデル化した。また,コンクリートの材料特性は,圧縮域を修正Ahmadモデル,引張域をテンションスティフニング効果を考慮したモデル,ひび割れ後の圧縮強度の低下を長沼らの提案モデルで評価した。解析結果より,①の場合と比較して,②の載荷履歴では1割,③の載荷履歴では3割の水平耐力の低下が見られ,二方向水平加力による影響が見られた。面外方向水平変位を受けることによって,壁板内のせん断ひび割れが大きく開くことで応力伝達が困難になること,壁板内に形成される圧縮ストラットの断面積が減少することなどが水平耐力低下の一因として考えられるが,耐力低下の割合は,解析に使用する材料モデルや載荷履歴など様々な因子の影響を受けるため,キャリブレーションのための実験が不可欠である。 これらの解析結果を基に,断面,配筋の設計を行い,縮尺30%の耐震壁試験体を3体製作した。より有用性の高い実験結果が得られるように,実験変数である載荷履歴や,試験体に作用させる長期軸力,せん断スパン比などの載荷条件の検証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,水平二方向載荷が,RC造耐震壁の構造性能に及ぼす影響を検証することを目的としている。本年度の研究では,3次元有限要素解析により,水平二方向載荷の影響がどのような条件下で大きくなるか検証を行い,その成果を反映させる形で,実験試験体の断面,配筋の設計を行った。次年度は,実験結果を踏まえた解析モデルの修正や,応力伝達経路の特定を行い,マクロモデルの構築に向けた基本的な情報の収集を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,縮小試験体の静的載荷実験を実施し,水平二方向載荷がRC造連層耐震壁の水平耐力に及ぼす影響を定量的に評価するとともに,局所的な変形や,壁板のせん断ひび割れ幅を計測する。その上で,有限要素解析プログラムを用いたパラメトリックスタディを実施し,試験体数が限られるため実験では十分検証できない載荷条件や,断面寸法,壁板の位置(中心,偏心),配筋量の影響について検証する。
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