研究課題/領域番号 |
26420553
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中原 浩之 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (60315398)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 耐震壁 / ひび割れ / CFT短柱 / せん断破壊 / 制振壁 / アンボンド鉄筋 / 水平加力実験 / 大野式加力装置 |
研究実績の概要 |
九州大学の崎野らは,2003年度から基盤研究(B)「履歴ダンパー内蔵型連層耐震壁を有する合成構造架構の最適設計法の開発」の研究に着手し,従来とは異なる「制振壁」を提案し,その後の基盤研究(A)「次世代合成構造建築の開発」と併せて7年間の研究を実施した.崎野の「制振壁」は,壁脚と壁頭がコンクリート充填鋼管(CFT)短柱により作成されている.このようなプロポーションとなると,CFT柱といえどもせん断破壊することが危惧される.申請者は,この問題について既にH23-24科研費,若手(B)「コンクリート充填鋼管柱のせん断破壊性状に関する基礎的研究」において取り組んでいる.ただし,この研究では,円形断面を有するCFT柱に実験対象が限定されているため,さらに長方形と正方形断面のCFT試験体を作成し,繰返し曲げせん断載荷実験を実施している.これにより,ひび割れ制御機能を有する「制振壁」の利用をさらに促進できる段階に到達した. 次に,「制振壁」の考え方をそのままにさらに簡便な施工性をもつRC系の耐震壁を開発した.新しく提案した「ひび割れ制御型連層壁」の外観上の特徴は,柱形を持たず,壁脚部にスリットがあることである.これにより,曲げ耐力と曲げ剛性を下げ,壁部のせん断余裕度を大きくしている.さらにコンクリートの圧縮抵抗が減じられているため,中立軸位置が従来の耐震壁よりも中央寄りに移動する.このことにより,耐震壁で観測される材軸方向への伸びとそれに伴う壁上部へのひび割れの進展が抑制される.本年で既に4体の実験結果が得られており,当初の目的をほぼ達成できている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度予定の耐震壁実験試験体は2体であったが,既に4体の実験結果の採取に至っている.また,CFT短柱の弾塑性性状についても既に長方形断面を有する7体の実験結果が採取できた.解析研究については,以前の科学研究費によって実行したせん断破壊が先行する円形CFT短柱の弾塑性性状をFEM解析モデルによって精度良く予測できるレベルに到達しており,今後の解析研究の見通しは良好である.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年4月1日付で研究代表者は,九州大学から長崎大学に異動した.この異動に伴い,研究環境が変化することにいかに対応できるかによって,今後の研究の進捗は左右される.本年度実施予定の耐震壁実験試験体2体は九州大学の実験室において実験を実施する.CFT短柱の実験は,可能であれば長崎大学にて実施するべく環境を整える.もしも,不可能な場合は,九州大学の施設を利用して実験を実施する予定である.解析研究については,引き続き九州産業大学の内田教授と連携して進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費と旅費が当初の見積もりよりも安く済んだため,17万円程度の残が出た.
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次年度使用額の使用計画 |
研究代表者は,平成27年4月1日付で,九州大学から長崎大学に異動となった.長崎大学での実験環境を整えるために,上記の残額を使用する予定である.
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