研究課題/領域番号 |
26420562
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
師橋 憲貴 日本大学, 生産工学部, 教授 (90220110)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 低品質再生骨材コンクリート / ビニロン繊維 / 乾燥収縮 / 付着割裂強度 / 梁部材 / 光ファイバセンサ / 再生粗骨材 / 再生細骨材 |
研究実績の概要 |
ビニロン繊維で補強した低品質再生骨材コンクリートを用いた梁部材の付着割裂強度を検討するにあたり,まず実験計画を行った。 ビニロン繊維については,各種の繊維を使用したコンクリートの乾燥収縮の実験データを調査した結果,乾燥収縮に対してより効果があると認められる,細い繊維(直径100μ,標準長12mm,ヤング率28GPa,比重1.3)を用いることに決定した。ビニロン繊維のコンクリートに対する混入量については,ビニロン繊維で補強したコンクリートはフレッシュ性状におけるスランプロスが生じることからビニロン繊維混入率は高い値とはせずに0.2%とした。 低品質の再生コンクリートについては,平成26年10月20日に日本建築学会から発行された,再生骨材を用いるコンクリートの設計・製造・施工指針(案)の『第11章 鉄筋コンクリートに用いる再生骨材コンクリートL』 に示される再生骨材Lの置換率の上限値を使用した。すなわち再生粗骨材を単独で使用した場合の置換率50%とした。再生粗骨材と再生細骨材を併用した場合の置換率は,各々30%と15%とした。置換率の上限値とすることで乾燥収縮が大きくなると考えられる厳しい条件下の低品質再生骨材コンクリートを用いる設定とした。 主筋については,重ね継手部を水平に重ね継手した場合と縦に重ね継手した場合の2通りを計画した。また,従前の異形鉄筋に加え,近年補強筋として開発された2タイプの鋼板格子筋も使用することとした。1タイプ目は,鋼板をレーザーで直接格子状に切断加工した格子鋼板筋であり,2タイプ目は,鋼板の軸方向にレーザーでスリットを挿入し,ジャッキで横方向に展張した展張格子鋼板筋を配筋の省力化のため異形鉄筋の代替えとして使用する計画とした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験計画における使用材料の検討に対してビニロン繊維メーカー,低品質再生骨材コンクリートの製造工場,格子鋼板筋製造メーカーとの打合せおよび調整に時間が掛かってしまった。 ビニロン繊維メーカとの検討では,既往の文献調査を基に,使用する繊維の違い,混入量の違い,普通コンクリート及び再生骨材コンクリートの違いにより乾燥収縮率がどのように異なるのかについて協議の時間が費やされた。 低品質再生骨材コンクリートの製造工場との検討では,再生骨材と天然骨材との併用について,天然骨材の調達方法や製造工場の出荷実績による,スランプ値・圧縮強度発現の協議に時間が費やされた。 格子鋼板筋製造メーカーとの検討では,レーザーでの切込み位置及び展張の後の補強筋のスリットの空隙寸法の確保の協議に時間が費やされた。 現在は,実験計画が完了し,試験体の作製に取り掛かっている。試験体は,低品質再生骨材コンクリートを用いた梁部材を普通コンクリートを用いた梁部材と比較検討することとし,ビニロン繊維の混入の有無,主筋に異形鉄筋と鋼板格子筋を使用した場合の付着割裂強度の違いについて検討する計画とした。低品質再生骨材コンクリートの打設は,平成27年5月に予定しており,平成26年度を過ぎてしまっているが,平成27年6月にコンクリートの材令が5週時における載荷実験が行えるので,実験後早急に実験データを分析してまとめる方針である。
|
今後の研究の推進方策 |
低品質再生コンクリートを用いた梁部材は乾燥収縮ひび割れが発生すると予想されるため,材令5週実験用と材令1年実験用の2シリーズについて同時に作製する。平成27年5月にコンクリートを打設後,材令が若く乾燥収縮ひび割れがまだ発生していない材令5週実験用の梁部材を平成27年6月に載荷し,付着割裂強度を確認する。 また,ビニロン繊維で補強した低品質再生骨材コンクリートを用いたコンクリート供試体を恒温恒湿室に保存して乾燥収縮率を定期的に計測し乾燥収縮に対するビニロン繊維の補強効果を検討する。 さらに,梁部材の乾燥収縮ひび割れの発生状況を材齢1年実験用の梁試験体を対象にして長期的に観察して行く。梁試験体の側面の乾燥収縮ひび割れの発生に伴うひずみ状態の変化を計測するため,外付けの光ファイバセンサを梁試験体側面に取付し継続的に構造ヘルスモニタリングを行う予定としている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験計画が遅れてしまったため,梁試験体の作製に掛かる費用の支出が次年度以降となってしまった。実験計画が決定したので,現在,試験体を作製中であり,梁試験体27体の製作費として次年度の使用を予定している。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年1月に梁試験体の製作会社に発注を依頼済であり,現在,鉄筋の加工・配筋,型枠の切断・組立作業が進行している。平成27年5月にコンクリートを打設予定であり,コンクリート打設後は2~3週間梁試験体の養生期間を要するが,平成27年6月には梁試験体の納品となるので,梁試験体の作製費用が支出される予定としている。
|