ビニロン繊維で補強した低品質再生骨材コンクリートを用いた梁部材の付着割裂強度を検討するための実験計画に基づき,延べ27体の梁部材を作製した。27体の内,12体は主筋に異形鉄筋を使用して,重ね継手部を水平に重ね継手した場合と縦に重ね継手した場合の2通りの梁部材を計画した。また15体は,近年補強筋として開発された2タイプの格子鋼板筋を使用して縦に重ね継手した梁部材を計画した。 再生骨材コンクリートは日本建築学会から発行された『再生骨材を用いるコンクリートの設計・製造・施工指針(案)』の第11章 鉄筋コンクリートに用いる再生骨材コンクリートLに示される置換率の上限値を使用して,再生粗骨材を単独で使用した場合の置換率を50%としたものと,再生粗骨材および再生細骨材を併用した場合の置換率各々30%および15%とした。また,ビニロン繊維については,再生骨材コンクリートの乾燥収縮に対して効果があると認められる,細い繊維(直径100μm,標準長12mm,ヤング率28GPa,比重1.3)を用いた。 再生骨材コンクリートおよび普通コンクリートは,平成27年5月に打設した。ビニロン繊維で補強した低品質再生骨材コンクリートの乾燥収縮率および乾燥収縮ひび割れの発生状況を検討するため,コンクリート打設後1年が経過するまでを期限として,梁部材6体を実験棟内に保存し,定期的に乾燥収縮ひび割れの発生状況の観察と乾燥収縮率の測定を継続させた。最終年度の平成28年6月にコンクリート打設後材齢1年時における梁部材の構造実験を行った。その結果,材齢1年時の付着割裂強度は一部微細な乾燥収縮ひび割れの発生は認められたが材齢5週時と比較して同等以上となった。梁部材の付着割裂強度に関する構造学の観点から総合的に判断して,ビニロン繊維で補強した低品質再生骨材コンクリートの構造用コンクリートとしての有効利用の可能性を明らかにすることができた。
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