本研究では、研究代表者のグループが独自に開発した「層間変位センサ」の使用を前提とした建築物の健全度診断の構築を目的としている。開発した「層間変位センサ」は、光学的なメカニズムを利用して、地震時に生じる層間変位を直接計測するものである。上階床下端に設置した光源の発する光から、下階床上端に設置したPSD要素が光源位置を割り出している。 この計測原理に起因するが、床の曲げ変形によってPSD要素設置位置が傾斜すると、計測された層間変位に誤差が生じるおそれがある。この欠点に対処する目的で、ジャイロセンサと加速度計を組込んだ「統合型層間変位センサ」を試作した。このセンサを小型建物模型に設置して加振実験を実施し、ジャイロセンサによるデータからPSD設置位置の回転角情報を得ることで、計測誤差の補正を行い得ることを確認した。この補正の効果に関しては、レーザー変位計による計測値との比較から検証している。 さらに、3次スプライン補間と組合せることで、限られた層に「小型統合型層間変位センサ」を設置するのみでも、全層の推定が可能であり、実用的な建物健全度判定法の構築に結び付けることができる。 3次スプライン補間法については、現状でもっとも普及しているものが加速度センサであることを考慮し、加速度計測から層間変位情報に変換することを想定した全層推定手法についても検討し、学術誌への投稿を行った(査読を経て2018年4月号に掲載された)。
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