研究課題/領域番号 |
26420568
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
持田 泰秀 立命館大学, 理工学部, 教授 (60581171)
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研究分担者 |
藤井 衛 東海大学, 工学部, 教授 (70130094)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電気比抵抗 / 埋込み杭 / 杭周固定液 / セメントミルク / 泥水 / 施工管理 / 圧縮強度 / ブリージング |
研究実績の概要 |
本研究は、プレボーリング工法の埋込み杭の杭周固定液の施工品質管理において、電気比抵抗調査により、施工時の電気比抵抗値から材齢28日の圧縮強度を評価する方法を明らかにすることを目的としている。近年、土木構造物では、施工管理時に杭周固定液の未固化試料による強度確認がなされている。建築構造物においては、その様な施工管理手法が活用されていないのが現実である。その理由の一つに、杭周固定液に長期的な強度を期待する建築構造物が極めて少ないことが挙げられる。しかし、現実には、基礎梁の無い長期的な杭せん断力の生じる建築構造物なども多く存在することから、本研究での杭周固定液の施工品質管理に関する研究が、今後の杭周固定液の施工時の強度性能確保に努めるべき管理手法の開発に寄与することを期待する。 現在の埋込み杭の杭周固定液の施工品質管理では、施工現場のセメントミルクプラントの試料から採取した杭周固定液の材齢28日の圧縮強度の管理を中心に行ってきた。そのため、泥水との混ざり具合の配慮、強度試験の手間および強度不足時の手戻り手直しの労力など多大となる。本研究は、施工現場での打設直後の杭周固定液の電気比抵抗調査値により、材齢28日の圧縮強度を評価するところに特徴があり、材齢28日の圧縮強度の評価が可能になれば、電気比抵抗調査でのICT技術を用いた土の中の視える化施工を実現し、より迅速な有効な施工管理手法となる。 本年度は、室内実験にて市販の4電極の電気伝導率セルにて、埋込み杭の杭周固定液の材齢によって電気比抵抗値に及ぼす影響と圧縮強度に与える影響を明らかにした。杭周固定液の配合の中で、代表的なW/Cや単位セメント量等と土質(砂、粘性土等)の混入量をパラメータとした供試体において、電気比抵抗測定時の電極溶液条件を変えて、材齢(x)と材齢(x)時の電気比抵抗値ρ(x)の関係、材齢(x)と材齢(x)時の圧縮強度qu(x)の関係を把握した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
室内試験によって、W/C=60%、80%、100%、セメントは普通ポルトランドセメントと高炉セメント、泥水を礫と砂の2種類で体積比を1:1、1:1.5、1:2のパラメータとしたセメントミルク供試体を以下の3つのケースで試験を実施した。 CASE1は、材齢0日~28日まで溶液を用いず供試体中央に直接電極を直接貫入させて、材齢と電気比抵抗の関係、材齢と圧縮強度の関係を明確に把握する実験。CASE2は、材齢1日~28日まで供試体中央に直径12㎜の孔に、0.1規定濃度のKCl溶液を注入した供試体にて材齢と電気比抵抗の関係、材齢と圧縮強度の関係を明確に把握する実験。CASE3は、材齢1日~28日まで供試体中央に直径12㎜の孔に、セメントミルクと同様の電気比抵抗を有する濃度のKCl溶液を注入した供試体にて材齢と電気比抵抗の関係、材齢と圧縮強度の関係を明確に把握する実験。以上の各々実験で、混合する水とセメントミルクの電気比抵抗値、材齢0日~28日における電気比抵抗値、材齢3日7日28日の圧縮強度の関係を明らかにした。 その研究の室内試験結果から、セメントミルクの材齢0~1日の材齢と電気比抵抗の関係において、各実験共通に材齢0~150分程度までは、電気比抵抗値は低下する傾向がみられ、ブリーディングの終了と電気比抵抗の下限が関連していることが確認された。セメントミルク中のイオンの増加により、電気比抵抗の低下が生じたと推定される。それ以後の硬化過程では、既往の研究と同様に、電気比抵抗値は増加する傾向がみられた。 尚、室内試験は、立命館大学生産材料研究室を主体に実施し、硬化したセメントミルク供試体のカットと圧縮試験は学生作業では危険性も生じたため、杭メーカーの協力を得て試験所にて改善実施した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は予定通り、実施工実験を行い、施工時の試験孔に未固化採取器と未固化試料採取ヘッドを用いて採取したモールドコアにより、室内試験で明らかにした材齢に伴う電気比抵抗と圧縮強度の関係が、実施工時における材齢に伴う電気比抵抗と圧縮強度の関係にも適用可能であるかどうかを検討する。施工現場セメントミルク製造プラントの水とセメントミルクの比重、温度、及び電気比抵抗を測定する。未固化採取器を用いて、深さ方向の上部5mは1mごとに採取し、未固化試料採取ヘッドを用いて、それより深い位置で10mごとにモールドコアを採取する。地上に上げた試料から比重、温度、電気比抵抗を測定し、圧縮試験用の直径5㎝、高さ10㎝のプラスチックモールドに移し替える。実施工実験では、現地土の孔壁からの周辺固定液への混入の影響や、その他施工時のばらつきが生じることが予想される。そのため、砂層を主体とする地盤、粘性土を主体とする地盤、砂と粘性土が互層となっている地盤などで、その各々の地盤で実施工実験を行い、それらから土の混入による影響を明らかにする。室内実験で行った供試体パラメータと同一のものは無く、その中で近い性状のものを用いて、材齢に伴う電気比抵抗と圧縮強度の関係が室内実験と同様であることを明らかにする。 これらによって、室内実験で明らかにした施工時の電気比抵抗ρ(0)による材齢28日の圧縮強度q(28)の推定を行い、その可能性を検証する。尚、施工環境による品質のばらつきについては、電気比抵抗と圧縮強度の変動係数の関係にて管理可能であるかを判断する。
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次年度使用額が生じた理由 |
立命館大学生産材料研究室にて実施予定の室内試験について、学生が実施するにあたり、硬化したセメントミルク供試体のカット作業が相当に危険度が高いと判断した。そのため、硬化したセメントミルク供試体のカットおよび圧縮試験の一連の試験作業を杭メーカーに協力してもらった。その理由で、人件費や謝金が予定より削減した。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度は、施工試験が主となるので、人件費・謝金の計画の変更は無いと判断している。
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