研究課題/領域番号 |
26420570
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
松宮 智央 近畿大学, 建築学部, 准教授 (20454639)
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研究分担者 |
岡崎 太一郎 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20414964)
長江 拓也 名古屋大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (90402932)
高橋 典之 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60401270)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 鉄骨造建物 / 柱梁接合部 / 極大地震 / 終局限界状態 / 耐力劣化 |
研究実績の概要 |
鉄骨造建物の設計では,骨組が本来保有している塑性変形能力を十分に発揮できるように,例えば柱及び梁の仕口部は保有耐力接合とし,骨組の急激な耐力低下が生じる恐れがないことを確かめている。しかし,極大地震時において設計限界状態を超える大変形が生じることを想定し,建物の真の終局限界状態を検討するためには,部材の耐力低下を伴う動的弾塑性応答までを評価する必要がある。現行の耐震設計に忠実に従った建物でも,終局的には,大変形領域において設計で想定しない変形を経て崩壊に至る可能性が高い。本研究では,部材端部の破断性状と骨組の降伏機構が建物の終局限界に及ぼす影響を評価することを目的としている。 本年度は,研究活動に必須の技術資料の収集に努めました。研究作業に採用するプロトタイプ建物を4-15階にて複数棟を選定するため,東北地方太平洋沖地震によって甚大な被害を受けた東北地方の被災調査を行いました。東北被災調査について言えば,地震直後の壊れた建物から得られる観察資料は既に詳細な報告がなされており,新たな知見は殆どありません。ですが,次に予測される南海トラフ巨大地震の地震強度は東北地震のそれを遥かに上回ります。また,そこに含まれる都市の数,建物群の総量は比較にならないほど大きく,この不可避の地球規模のイベントを見据えた予防対策,新耐震構法・設計法の提示というのは日本社会にとって最も重要な緊急課題です。そのためには,東北地震と南海トラフ地震の地震強度を精密に比較し,さらに東北地震を経て現存している建物群の余裕度評価を実行することが,非常に直接的で合理的なアプローチであると考えたからです。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度および来年度においては,骨組解析用の強度劣化モデルの構築を行う計画である。ここでは,適切な解析モデルの同定と精度の検証が課題となる。つまり,強度劣化性状を表現する場合の履歴特性の各種条件は結果に大きな影響を与えるが,それに対して適切なモデル化が求められる。モデル化について特に注意が必要となるのは以下の(1)~(3)である。(1)鉄骨梁に対するRC床スラブの協力が想定以上になることで柱降伏に至る。(2)RC床スラブの存在により柱梁接合部において梁端接合部の破断が誘発される。(3)柱脚部が露出柱脚の場合,圧縮側ではベースモルタル圧壊,引張側ではアンカーボルトの破断により柱脚が負担できる曲げモーメントがほぼなくなるため1階柱頭に局部座屈が生じる要因となる。以上(1)~(3)の条件のうち,(1)および(2)について複数の柱梁接合部について検討を行っており,RC床スラブの影響で破断が誘発されると指摘されている梁下フランジを補強した場合についても追加で検討している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,数値解析において東北地震時の応答性状予測を実施し,さらに崩壊限界状態までの余裕度評価,そして南海トラフ地震時の被害予測へと展開していきます。また,Pδ効果を考慮した鉄骨造建物の柱梁接合部に対する動的な載荷実験を行い,解析と実験の両者を補完することで,最終的には,その被害を大きく低減できる耐震構法・設計法へと結びつける研究活動を目指します。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が所属する大学学部において,申請時に計上していた解析ソフトが学部共通のソフトとして導入されました。代表者のみではありますが,利用が可能となりましたので,解析ソフトを購入する必要がなくなりました。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画では詳細な解析により鉄骨造建物の終局限界状態を検証する予定でしたが,代表的な柱梁接合部に対する載荷実験を行い接合部挙動に対する詳細な実情報が得られれば,両者を補完することで解析の妥当性の検証など,より高度な検討を行うことができます。そこで,本年度繰り越された予算と来年度の予算を合わせて,鉄骨造建物の柱梁接合部を模擬した試験体を1体製作する計画です。なお,実験を行うための施設の利用は,すでに許可されております。
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