研究課題/領域番号 |
26420572
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研究機関 | 米子工業高等専門学校 |
研究代表者 |
稲田 祐二 米子工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (00249830)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | LVL / ボルト接合 / ビス接合 / 地場産木材 / せん断耐力 / ヴォールト / 接合金物 / 締め付けトルク |
研究実績の概要 |
地場産LVLを対象にしたボルト接合について静的載荷実験を行い接合部強度の性状を明らかにした。即ち、接合部強度に対する建築学会「木質構造設計規準」算定式の適用性について検討し、破壊モードおよび耐力ともに算定式が鳥取県産材LVLに対しても妥当性を有していることを確認した。更に、LVL特有のラミナの積層方向と接合金物の方向の違いが強度に与える影響を実験により検討した。その結果、ボルト接合においてはラミナの接着方向と接合金物の方向の違いが強度特性に与える影響はほとんどないことを明らかにした。また,ボルト接合に用いる座金の大きさおよび締め付けトルクをパラメータとして接合部の構造性能実験を行い,座金の大きさと締め付けトルクが及ぼす影響を明らかにした。これらの結果をもとに研究の最終目的である新しい建築空間構造システムの具体例として立体ヴォールト構造システムの構造計画及び、その改良設計を継続した。本研究開発で目指す構造システムは、小径木による大スパンのスペースフレーム構造物であることから、部材接合部の強度特性やその形状が施工性に大きく影響を与えることが予想されるため、考えられる接合法の改良を精密に行った。特に、新構造システムに関する施工性については構法が確立されていないため、パイロット事業として3mスパンのプロトタイプによる施工実験を行い、設計条件を満足することを確認した。一方、コストの削減や施工性の向上、意匠性の向上を目標とし改良型プロトタイプの設計も行った。構造計算は建築基準法に基づく許容応力度設計法とした。また、施工方法を検討するために1/1スケールのモックアップを製作し、施工性の確認をした。更に、改良型プロトタイプのヴォールトの施工計画を検討することで、6mスパンの改良型プロトタイプヴォールト構造システムの設計と施工計画を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地場産材を対象にしたボルト接合の力学特性に関する実験的な研究に関しては,LVLのラミナの積層方向がもたらす影響及びボルトに用いる座金の違いと締め付けトルクがもたらす影響を明らかにするための実験を行い、前者の影響はほとんどないが後者については大きく影響することを明らかにした。一方、新しい構造システムの開発に関しては,立体ヴォールト構造物のプロトタイプの設計及び施工実験を通じて、設計で想定した構造性能と施工性能を有することを確認した。また、基礎実験と施工実験の結果を参考にしつつ、プロトタイプのコストダウンと意匠性の向上を目指した改良型プロトタイプの設計を行った。従って,平成27年度計画していた研究目標をおおむね達成したといえる.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度および27年年度の研究成果をもとに平成28年度はヴォールト構造システムの開発研究を完了する。研究開発の最終目標とする6mスパンの改良型プロトタイプの建設を鳥取県内で行う。建設地および用途が決定後に基礎スラブ・腰壁の設計、外装材の設計ならびに建設地に適合した構造計算を実施し構造設計を完了する。また、施工計画を精査し合理的な施工法を実践することにより、様々なスパンの建築構造物に展開が可能なシステムの実証例とする。完成した実証棟は、新構造システムの展示棟とし今後の展開の起爆剤として活用する。 一方、新構造システムの耐震設計に必要となる地場産LVLを用いたボルト接合部の復元力特性を正負交番繰り返し載荷実験により確認する。得られた復元力特性を用いて耐震性能を確認するシステムの構築を検討する。更に、平成27年度に施工実験に用いたプロトタイプを実験供試体とした新構造システムの鉛直載荷実験を行う。これらの学術的な研究成果は平成26年度と27年度に実施した研究成果とあわせてまとめ、本構造システムの中大規模の建築構造物への適用の基礎資料とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究開発のために予定していた旅費とその他の経費が見込みより少なく次年度繰越金が生じたものである.
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次年度使用額の使用計画 |
繰越し金は,主に研究開発の最終年度に設計・施工を予定している実証棟の建設及び成果発表旅費として使用する予定である.
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