研究課題/領域番号 |
26420578
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大風 翼 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40709739)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ラージ・エディ・シミュレーション / 大気安定度 / 都市風環境 / 都市温熱環境 / 汚染質拡散 / 流入変動風 / 乱れの積分長さスケール / 乱れの積分時間スケール |
研究実績の概要 |
1)温度変動を考慮した変動風を生成する数学的理論の構築 風速変動の3成分と温度変動の計4成分の共分散を4×4の正則行列で表現し、その正則行列にコレスキー分解を施した。各々の変動を平均値と変動成分に分解し、変動成分を乱数の組み合わせによって構成される平均値が0、分散が1の変数Ψjと上記でコレスキー分解を施して得た下三角行列aijの内積で表現した。上記の平均値0、分散1の変数Ψjの各々の成分どうしの共分散が任意の値を満たし、かつ、各々の変数が想定する自己相関関数および空間相関関数を満たすよう既往の手法を参考にしΨjの時系列データを表現した。各時刻で、下三角行列aijと変数Ψjの内積を求めることにより、速度とスカラー量の変動の時系列データを生成を可能にした。更に、前述の理論をプログラムでコーディングし、次年度以降に数値流体解析を実施するためのインターフェイスまわりの整備も実施した。 2)都市境界層を模擬した風洞実験(中立・不安定成層) 東京工芸大学の温度成層風洞を用いて、都市境界層を模擬した風洞実験を実施し、気象の擾乱の影響が無い理想的な条件のもとで、中立、不安定成形成時における諸量の平均値、乱流統計量、相関量を取得した。空間相関量のデータの取得には、PIV(Particle Image Velocimetry)を用いた画像解析も用い、風速の空間分布から乱れの積分長さスケールを直接推定するための種々の検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
・温度変動を考慮した変動風生成の数学的理論を構築した。更に、プログラムのコーディングを行い、次年度以降の流体解析の境界条件とするインターフェイスまわりの整備は実施済みであり、予備的な流体解析も既に実施済みであるため。 ・東京工芸大学の温度成層風洞で実施したPIV(Particle Image Velocimetry)で取得した風速は熱線風速計で高精度に取得したポイントの風速の統計量ともよく一致しているおり、風速の空間分布も得ることができ、本研究において重要な乱れの積分長さスケールを直接得るための貴重な都市境界層中の風速の空間相関のデータを取得することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、・昨年に引き続き、東京工芸大学の温度成層風洞を用いて、都市境界層を模擬した風洞実験を実施し、乱れが急速に減衰する安定成層形成時における速度、温度、濃度場の平均値、乱流統計量、相関量を取得する。続いて、これまでに取得した風洞実験結果を分析し、安定、中立、不安定成層次の各々の条件で、平均風速、風速及び温度変動の共分散、自己相関関数、空間相関関数を得るほか、自己相関関数、空間相関関数に含まれる乱流渦の特徴的時間スケール、空間スケールを統計量から算出する。前述の諸量をターゲットに、温度を考慮した変動風の時刻歴データを生成する。生成した変動風の時刻歴データをLESの流入境界条件として、風洞実験を再現した数値解析を行い、流入面から風下側の幾つかの点で、実験結果と比較を行い、風速や温度変動の統計的性状を正しく再現できることを確認する。 また、都市境界層中の速度・温度同時計測のための野外観測を日本工業大学にある屋外都市モデル(COSMO)で行う予定であり、レイノルズ数が大きく、気性的擾乱もある流れ場で、諸量の平均値、乱流統計量、相関量を取得する。 平成28年度は、野外観測結果を、日中(不安定成層形成時)や夜間(安定成層形成時)等に分類し、各々の条件で度変動を考慮した変動風データを生成し、LES解析を行う。また、本研究で開発した温度を考慮した変動風生成のプログラムを汎用流体解析ソフトのサブルーチンプログラムとして公開するための準備をすすめる。汎用流体解析ソフトの中で、オープンソースコードとして、広く普及しているOpenFOAMへの組み込みを現時点では想定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
風洞実験のデータ整理の一部を、学生アルバイトの謝金にあてていたが、当初の想定よりも得たれたデータが多く、予定の作業が年度内に終わらなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度の学生アルバイトの謝金にあてる。
|