高層マンションが急増するなかで、震災時にライフラインやエレベータが停止し、地上との行き来が困難な状況下で住民が混乱・孤立することが懸念されている。火災や構造体への損傷が無い状況では、避難せずに住み続けられる状況を実現することが重要である。本研究ではこの課題に対して、建物のレジリエンスを高めるための建物管理方策に着目し、地震災害時に住民の居住継続を支援する建物管理の新たなシステムを実証的に開発した。。設備系統を中心に稼働状況や被害状況を的確に収集、建物管理者に集約し、機能不全の原因把握、迅速な応急・復旧対応を可能とする建物管理方策の標準的な方法論を開発したものである。実際の再開発地域の超高層マンションに本開発システムを実装し、運用段階までの実証的な取り組みを進めた。
構造躯体及びライフライン・設備系統に設置したセンサー類によるモニタリング技術を最大限に活用することで、建物の管理機能を強化し、重要な情報を防災センターに集約する。本システムを活用することにより、建物管理者は、障害が発生した場合でも機能不全の原因を把握し、建物の重要機能を継続するために迅速に応急・復旧対応を行うことが可能となる。本システムの導入により災害時の拠点として防災センターの機能を充実させることが可能となる。さらにこうした被災時の状況に関しては、一人一人の人間が被災後に取るべき行動を判断する上での重要な情報であることから、地域の住民に向けてマンションの共用空間やロビー、各住戸等に情報を配信するシステムをとしている。今後重要になるのがこうした建物における情報提供機能の充実である。実装対象地域では、統合モニタリングシステムと連携する形で、コミュニティで共有する「防災・減災情報システム」を構築した。
本研究開発を通じて、建物のレジリエンスを評価する方法論と新しい「レジリエンス工学」の構築に貢献できればと考えている。
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