研究課題
本研究の目的は,インドネシア主要都市において急成長する中間層を対象とした集合住宅のパッシブクーリング手法を開発することにある。平成25~26年度は,①スラバヤ市内の既存集合住宅を対象に訪問調査を行い,各世帯のエネルギー消費の実態を把握し,②同様の集合住宅において実測を行い,熱環境の現状を調べることによって,既存の中間層向け集合住宅の問題点・改善点を整理した。具体的な成果は下記のとおり。・スラバヤ市内の集合住宅居住者347世帯を対象に訪問面接調査を実施した(2013年9~10月)。調査期間は乾季に位置づけられ,期間中の一日の外気温は26℃~37℃,相対湿度は27%~77%であった。・エアコン所有率は,中間層向けの民間集合住宅では92%であったが,低所得者向けの公共集合住宅では4.5%であり,扇風機(82%)と天井ファン(35%)を使用するケースが殆どであった。・公共集合住宅の世帯当たりのエネルギー消費量は,年間10GJ~11GJであった。調理用エネルギー消費量が約8割を占めた。エアコンを使用しない公共集合住宅の場合,冷房用エネルギー消費量は2割に満たなかった。・旧型と新型の公共集合住宅と民間集合住宅の3タイプの集合住宅において実測を行った(2014年9~10月)。自然換気条件下では,中間層向けの民間集合住宅よりも低所得者向けの集合住宅内の熱環境の方が快適であることを明らかにした。・これは,低所得者向けの公共集合住宅は躯体の熱容量が大きく,またバルコニーなどによって日射遮蔽が行われていたのに対し,中間層向けの民間集合住宅はエアコン使用を前提としたデザインになっているためであった。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の予定は,前年度調査結果を基にエネルギー消費の実態を把握し,さらに熱環境に関する実測を新たに行うことにあったが,さらにこれらに加え,二酸化炭素濃度減衰法による換気量の測定などの追加調査を行うことができたため。また,1年目であるが,結果を3本の論文としてまとめ,査読付きの国際会議と日本建築学会大会に投稿し,採択されている。
・既存の集合住宅を対象とした今年度の実測データの解析を進め,論文2本を国際ジャーナルに投稿する(4月~7月)。・当初の予定通り,スラバヤとマランに現存するコロニアル建築を対象に熱環境に関する実測を実施する(8月~10月)。・実測データの解析を行い,コロニアル建築の土着的な環境制御技術を見出す(11月~3月)。
すべて 2015
すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)