研究課題/領域番号 |
26420582
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
久保田 徹 広島大学, 国際協力研究科, 准教授 (80549741)
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研究分担者 |
宇野 朋子 武庫川女子大学, 生活環境学部, 講師 (90415620)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | パッシブクーリング / 省エネルギー / 高温多湿気候 / 東南アジア / 熱的快適性 / インドネシア / 国際研究者交流 / 自然換気 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,インドネシア主要都市において急成長する中間層を対象とした集合住宅のパッシブクーリング手法を開発することにある。平成27年度は,インドネシアのオランダ統治時代に建設されたコロニアル建築において熱環境に関する実測を行い,そこに培われた伝統的パッシブ技術を考察した。さらに一方では,昨年度までの研究成果を基に,インドネシアの中間層向け集合住宅の省エネルギーデザインを試作した。具体的な成果は下記のとおり。 ・バンドン市内だけで1500棟程度のコロニアル建築が現存しているが,これらのうち,374棟の建築図面を収集し,それらを建設年代と適用される環境技術等から分類した。 ・建物を訪問するなどして,実測対象を3棟に絞った。1棟はオフィス,2棟は学校として使用されていた。乾季に当たる2015年8~10月に,対象3棟における実測を実施した。期間中の外気温は約18℃~33℃で,相対湿度は16%~97%で変動した。学校2棟は,木造の構造に厚さ30~40cm程度の煉瓦とコンクリートの壁を用いた建物で熱容量が大きい。天井高(約5.5m)があり,窓やドアの上部に換気口が設けられていることに特徴が見られた。 ・実測により,対象としたコロニアル建築の室内は,躯体の蓄冷効果によって,昼間においても外気に比し3℃~5℃程度低温に保たれていることが分かった。屋根や天井には断熱材が用いられておらず,2階は1階に比し室温が高温であったが,室内風速が確保されていたため,1階と同様に熱的快適性は概ね満たされていた。 ・躯体蓄冷,がらりや換気口の使用,熱緩衝空間としての廊下スペースの使用,深い庇,天井高などのパッシブクーリング手法が複合的に導入されていることを見出した。 ・一方で,日射遮蔽と通風を活かし,さらに住民のコミュニティ形成を促す目的から,インドネシア中間層向け集合住宅のデザインを試作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定は,オランダ統治時代のコロニアル建築における熱環境に関する実測を行うことにあったが,これに加え,昨年度までの成果を基にインドネシア中間層向け集合住宅デザインを試作することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
・既存の集合住宅を対象とした,これまでの研究成果をまとめ,論文2本を国際ジャーナルに投稿する。 ・当初の予定通り,熱環境シミュレーションを実施し,現代技術と土着的技術を合わせたパッシブクーリング手法を提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者(宇野朋子)が中心となって実施予定であった海外調査を翌年度(2016年度)に行うよう変更したため。ただし,研究全体の計画は変更していない。
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次年度使用額の使用計画 |
上述の通り,研究分担者(宇野朋子)が2016年9月にインドネシア・スラバヤにおいて本研究の一部となる現地調査を実施予定であるので,その旅費に用いる予定である。
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