研究課題
本研究の目的は,インドネシア主要都市において急成長する中間層を対象とした集合住宅のパッシブクーリング手法を開発することにある。平成28年度は,これまでの研究成果を基に,熱環境シミュレーションによって,現代技術と土着的技術を組み合わせたパッシブクーリング手法を検討した。具体的な成果は下記のとおり。・旧型と新型の公共集合住宅と中間層向け民間集合住宅の3タイプの集合住宅を対象にシミュレーションを行った。同一条件下で比較したところ,無居住の場合には,新型・公共集合住宅と民間集合住宅よりも,熱容量が大きくバルコニーの設置された旧型・公共集合住宅の方が日中の室温は低温に保たれることが分かった。・熱容量の大きい旧型・公共集合住宅では,室温低下のためには夜間換気が有効であるが,新型・公共集合住宅と民間集合住宅においては日中の室温が外気温よりも高温になるため,終日換気の方が効果的であることが分かった。・寝室においてエアコンを使用する前提で,その冷房負荷を低減するパッシブ手法を検討した。その結果,天井高を抑え気積を小さくし,さらに壁の内側に断熱材を施すことで,最大で45%の冷房負荷削減が可能となることが分かった。・以上の結果によって導入技術の最適な組み合わせを求め,最終的に研究の総括として,中間層向け集合住宅の総合的なパッシブクーリング手法を提案した。・ここでは,寝室における部分冷房を基本とし,昼間と夜間で建物外皮の仕様を変える提案とした。建物中心にヴォイドを設け,特に昼間は風通しを重視したすまいとした。また,日射遮蔽を徹底するため,ベランダを配し,そこにガラリ窓を設けた。エアコンを使用する寝室では,出来るだけ気積を小さくし,高気密・高断熱化を図り冷房効率を高めた。なお,今後は採択済の国際共同研究強化基金を用いて本研究を展開させ,現地研究者とインドネシア国の省エネ基準を共同策定する予定である。
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