研究課題/領域番号 |
26420584
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
小島 昌一 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90305029)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 放射暖房 / 指向性 / 体感温度 / 熱的快適性 / グローブ温度 / 人体受熱部位 |
研究実績の概要 |
1.既存の放射暖房機器の熱放射の指向性の解明 市販の放射暖房機器の放射の指向性を把握するために、十分に広い室内空間(佐賀大学理工学部大講義室)に放射暖房機器を設置し、小型グローブ温度計によりグローブ温度を測定した。実験期間中は空調機により常時20℃設定とし、放射実験時のみ空調機を止めて吹出し気流の影響を受けないようにした。また日射を防ぐために遮光ブラインドをした。測定機器には小型グローブ球を用い、放射面に対して水平方向に3点、奥行方向に4点、高さ方向に5点の計60点を設け測定した。また、市販の放射暖房機器の通常の熱放射だけでなく、より指向性を強めるために反射板を用いた場合についても実験を行った。以上の測定結果を基に、各測定条件の熱放射のモデル化を行った結果を示す。 ①放射の指向性には反射板の影響が大きく作用し、反射板の長さが長くなるにつれ放射の指向性が高まる。②放射の指向性を高める効果は反射率の高い材料を用いた場合の方が高い。③放射発散度推定式によるモデル化はほとんど相違なく再現できているが、高温領域を中心に再現を行った ため放熱面から離れた位置では多少再現率が低い。 2.熱放射照射の最適な人体部位の解明 気温が安定した室内において、放射暖房機器からの放熱を被験者の様々な部位へ照射した。また、人体各部に熱電対を貼り付けた表面温度の測定と、被験者の快適性と温冷感に関するアンケートを実施した。定常熱環境においては、男性は下半身や胸部を暖めたとき、女性は腹部を暖めた時が快適となった。不均一放射場(近くに冷放射熱源あり)においては、男性は腹部や腰部を暖めたとき、女性は下腿を暖めたときが快適となった。また、冷放射の影響を受けにくい場合、男性は腹部や胸部を暖めたとき、女性は腹部や胸部を暖めたときが快適となった。快適な照射部位が男女で異なるのは、筋肉や脂肪の量の違いによるものであるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画では、大目的として「強い指向性を有する放射暖房システムの開発」と「体感温度制御方法の開発」を掲げている。その中でも、「強い指向性を有する放射暖房システムの開発」については、「既存の放射暖房機器の熱放射の指向性の解明」を、「体感温度制御方法の開発」については、「強い熱放射曝露環境における熱放射照射部位とグローブ温度測定位置の最適条件の解明」を具体的な目標とした。 「既存の放射暖房機器の熱放射の指向性の解明」についてはほぼ計画通り実施できた。また、「強い熱放射曝露環境における熱放射照射部位とグローブ温度測定位置の最適条件の解明」については、実験の被験者がそれほど多くない点が気になるが、今後の研究で被験者数を増やした実験を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後もこれまで通り、「強い指向性を有する放射暖房システムの開発」と「体感温度制御方法の開発」を目標にして研究を進める。平成27年度は、「強い指向性を有する放射暖房システムの開発」については、「ハロゲンヒータ等の放熱放射機器による強い指向性を有する放射暖房機器の開発」を、平成26年度の「既存の放射暖房機器の熱放射の指向性の解明」の結果を参考にして、数種類の放熱器(例えばハロゲンヒータ(図7)、カーボンファイバーヒータ、シーズヒータ)を基にして、各種反射板の最適な取り付け位置を検討し、既存の放射暖房機器より放射の指向性が強い新たな放射暖房機器を作製する予定である。 また、「体感温度制御方法の開発」については、「放射暖房制御用小型グローブ温度計の動特性と最適寸法の解明」を実施する。 本研究の放射暖房の制御対象はSET*であり、グローブ温度の測定値に基づいて算出される。したがって、暖房対象空間のグローブ温度を精度良く測定できることが重要である。その一方で、グローブ温度計の設置が執務の障害を引き起こすことが無いように、可能な限りグローブ球を小型化することが望ましい。ここでは、グローブ温度測定の精度と小型化の両立に供するために、グローブ球の寸法と周囲熱環境の変化に対する動特性を解明する。具体的には、各種寸法のグローブ球を供試体として作成し、それらを一定の気温に維持された恒温器内に設置し、その供試体近傍から熱放射又は冷放射を放射した場合の応答を市販のグローブ球による測定値と比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
設備備品の購入品の数量と単価が当初の予定から一部変更となり、残金が生じた。これによる研究計画の変更は無い。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度は、実験材料(発熱体)の購入を予定しており、その費用の足しにする予定である。
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