(1)強い指向性を有する放射暖房システムの開発 市販の放射暖房機器を元に、指向性が強い熱放射を照射できる暖房方法の開発を試みた。まず、市販の放射暖房機器の放射の指向性を把握するために、広い室内に放射暖房機器を設置し、放射暖房機器を放熱させて、小型グローブ温度計によりグローブ温度分布を測定した。この実験は測定精度を高めるために2年間実施された。測定点は、放射面に対して水平方向に3点、奥行き方向に4点、高さ方向に5点の計60点を設けて測定した。また、放射暖房機器よる放熱だけでなく、より指向性を強めるために反射板を用いた場合についても実験を行った。以下が実験により得られた知見である。 反射板が長くなるにつれて放射の指向性が強くなり、遠方まで加熱できる。反射率の高い材料の方が放射の指向性を強められる。 この結果を基に反射板により熱放射の指向性を強めた場合の放熱特性を推定する計算モデルを作成した。最終年度は、数値シミュレーションを実施した。その結果、タスク暖房には熱放射の指向性が強い放熱方法が適しているが、単に快適域を広げるだけであれば床暖房が他の放射暖房に比べて最も省エネルギーとなることも判明した。 (2)体感温度制御方法の開発 人体の様々な部位に熱放射を照射する被験者実験を行った。初年度は熱電対による人体各部の表面温度測定と、被験者の快適性と温冷感に関するアンケートを実施した。定常熱環境においては、男性は下半身や胸部を温めた時、女性は下腿を温めた時が快適となった。不均一放射場(近くに冷放射熱源あり)においては、男性は腹部や胸部を温めたとき、女性は下腿を温めたとき快適となった。次年度は心拍数の変動に基づくストレス指数の変動で被験者の快適性を推定する方法を試みた。その結果、前年度のアンケートによる結果とは違い、男女の性差はあるものの腹部等への熱放射の照射が最も快適感が得られる結果となった。
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