本研究は、睡眠リズムと睡眠感の地域・季節による違いを検証し、サーカディアン・リズムの観点から居住地域に応じた適切な照明条件を明らかにすることを目的としている。2014年から継続的に看護師寮に居住する看護師と看護学生を対象に、睡眠実態のモニタリング調査を行っており、2014年と2015年には、秋・冬・夏の3季節について睡眠データ(寝室の温度・湿度、照度、睡眠時間と睡眠効率、寝つきまでの時間)を得た。しかし、春の睡眠実態に関するデータは未入手であった。 2016年度は5月16日~30日の2週間に渡り、栃木県と福岡県の2つの地域にて、女性看護師ならびに学生を被験者に、引き続き睡眠データの収集を行った。栃木県の施設では11名、福岡県の施設では2名のデータを得ることができた。 結果、就床前の室内照度は、0~200Lxの間で推移しており、平均睡眠時間は400分であった。睡眠時間と就床前の室内照度の関係、睡眠感得点と就床前の室内照度の関係に相関は見られなかった。また、睡眠時間が長い場合でも、Epworth Sleepiness Scaleの得点が高い場合があり、日中の眠気が少ないとは限らない傾向にあった。また、帰宅後から就床までの室内滞在時間が約180分以下の場合、睡眠時間が長くても、日中の過度な眠気が生じる傾向があった。就寝時刻近くまで勤務している看護師に対しては、日中に睡眠の質を向上させる手当が必要であることが示唆された。
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