工場や業務用厨房において発生するオイルミストは臭気や汚れの原因となる。また、ダクトに付着したオイルミストは火災の原因となる。これらの課題を解決するためにはオイルミストの挙動を把握する必要がある。業務用厨房を対象とした既往の研究では、オイルミストの粒子数に着目すると粒径の小さいオイルミスト(1μm以下)が卓越しているが、質量に着目すると粒径の大きいオイルミスト(1μmから数10μm)が重要となることが明らかにされている。ただし、粒径の大きいオイルミストについては重力沈降や吸着などの影響は明らかにされていない。 平成26年度の研究では、決められた手順に従い調理を行う実調理実験と、模擬負荷装置を使用した模擬調理実験とを行い、発生するオイルミストの粒度分布を測定した。模擬調理実験においては模擬負荷条件を調整し、実調理実験の結果との対応を検討し、実験室内のオイルミストの空間分布を測定した。 平成27年度の研究では、オイルミストのエアロゾルとしての特性である重力沈降、凝集、壁面への吸着・脱着を実験結果とCFD解析結果に基づいて検討した。粒径が非常に大きい数10μmのオイルミストには重力沈降の影響が表れること、凝集はオイルミスト濃度が非常に高い調理機器直上部にのみ見られること、オイルミストの壁面への吸着の影響は大きいことなどが確認できた。 平成28年度の研究では、オイルミストの粒径ごとの空間分布の測定結果をCFD解析により再現した。すなわち、1μm以下のオイルミストはガス状物質と同様に扱い、粒子径の大きいオイルミストは代表的な粒子径ごとにCFD解析を行い、平成26年度に行った実験結果と概ね整合することを確認した。実際の業務厨房を簡単な形状でモデル化し、CFD解析によりオイルミストによる問題を解消する手法を考察した。また、紫外線によるオイルミスト除去効果について測定により検討した。
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