当該年度は、コミュニティ・インフラストラクチャー税(CIL)の適用基準など具体的な進め方を事例を通して明らかにしながら、CILの導入にともないこれまでの106条計画義務とともに都市開発による公的貢献の考え方にどのような変化があるのか考察することを目的とした。 本年度の研究においては具体的にまず、都市計画1991年法の106条によって導入された106条計画義務制度の設立からCIL導入までの背景について文献調査を中心に明らかにすることによって、都市開発による公的貢献の考え方の変化を考察した。その結果、英国においては戦後から都市開発にともなうミチゲーションの意味から公的貢献が求められており、106条計画義務制度の前にも課税制度が存在していたことがわかり、CIL導入についても歴史的な経緯から理解することが可能となった。 また具体的な進め方を事例を通して明らかにするために、ロンドン市内の具体的な都市開発の事例をケーススタディーとして現地調査及びヒアリング調査した。その結果、現在進捗している開発計画は106条計画義務制度による公的貢献を実施しており、その公的貢献の内容については多様な種類及び規模があることが明らかとなった。CILによる公的貢献については、現在、協議中の都市開発に適用されるため未だその結果としての都市開発はなく、今後の研究課題となった。 最終年である本年度は、都市開発にともなう公的貢献のあり方や課税の手法などについて知見を得ながら、都市開発の許可制度の異なるわが国においてどのような展開方法があるのか最終的に議論した。この結果については、投稿中の論文に詳しいが、106条計画義務制度による多様な公的貢献のメニューの存在や、開発計画敷地外における公的貢献が可能であることまた経済的貢献とすることも可能であることなどの柔軟性等が、わが国における展開方法への新たな知見となった。
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