研究課題/領域番号 |
26420600
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
岡部 明子 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70361615)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 都市農業 / 縮小都市 / ライプツィヒ / クラインガルテン / コミュニティーガーデン / バレンシア / 灌漑水路 |
研究実績の概要 |
ライプツィヒ(ドイツ)とバレンシア(スペイン)に直接赴き、資料収集するとともにフィールド調査を実施した。その際に、ライプツィヒにおいては、1)クラインガルテン発祥の地という歴史的背景、2)クラインガルテンの現状、3)縮小都市と都市農園の関係について注目し、一方でバレンシアにおいては、1)都市農園増加の背景、2)イスラム時代から続く灌漑水路と都市農業の関係に注目した。 ライプツィヒにおける現地調査・ヒアリング調査により、トップダウン型で形成されてきたクラインガルテンは、規制が厳しく、必ずしも現地の若者には好意的に受け入れられていなく、利用者の高齢化が問題になってきている実態を把握した。一方で近年、ボトムアップ型のコミュニティーガーデンが現地の若者からの人気を集めており、都市内の空地に多く誕生してきている。クラインガルテンとコミュニティーガーデンの2種の市民菜園が相補的に支え合い発展しあうことで、今の時代にフィットした都市農業の形成へと繋がることを研究により明確にした。 またバレンシアにおいても現地調査・ヒアリング調査を実施した。灌漑水路は都市拡張過程において、都市拡張を一時的に堰きとめる境界として利用されたり、灌漑水路の多いエリアは都市化が遅れたりと、都市構造の変容と灌漑水路の流路には一定の相関関係が確認された。そして現在においては、都市縮小の局面において、都市農業が灌漑水路沿い、工場跡地に計画されるなど、再び灌漑水路と都市構造の間に相関関係が生まれ始めていることを調査・分析した。 これらの一連の都市農業調査は、研究協力者佐倉の博士論文の一部としてまとめ、発表した(佐倉弘祐『近代化にともなう都市構造の変容と「水路」の関係について―スペイン地方中都市バレンシアを対象に』、2015年3月)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)研究計画においては、ライプツィヒ(ドイツ)調査以外にもコペンハーゲン(デンマーク)調査も計画していたが、現地との調査日程の都合がつかず、前年度の実施は断念せざるを得なかった。しかし一方で、バレンシア(スペイン)調査において、国際シンポジウムでの口頭発表など、予想以上の成果を得ることができた。 2)ライプツィヒ、バレンシアを主に、「欧州諸都市における都市農業の戦略的意味」について整理・分析を行い、両都市における都市農業の戦略的意味についてはおおよそ把握できたものの、「研究実施計画」に記した「欧州都市の都市農業が風土・文化的相違によって多様に展開していることや、その共通点や相違点が俯瞰できるような図の作成」までは至れなかった。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね計画の変更はなし。 今年度も積極的、果敢に現地に赴き、フィールド調査、ヒアリング調査を遂行し、欧州諸都市・特にスペイン地方都市における「都市農業の戦略的意味」について研究・分析を行い、「研究の目的」達成を目指す。そして随時成果物を作成し、積極的に国内外に発信していく。 前年度達成出来なかったコペンハーゲン(デンマーク)調査に関しては、今年度のスペイン3都市(バレンシア・サラゴサ・ビトリア)調査の中に組み込むことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コペンハーゲン(デンマーク)調査が都合により次年度に延期することとなり、代わりにバレンシア調査を組み込んだものの、結果的に多少の次年度使用額が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度のスペイン地方中都市調査にコペンハーゲン調査を組み込む際に使用する。
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