研究課題/領域番号 |
26420606
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
碓田 智子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70273000)
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研究分担者 |
栗本 康代 平安女学院大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (20410954)
増田 亜樹 大阪人間科学大学, 人間科学部, 助教 (50441126) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 重文民家 / 維持管理 / 活用 / 公開 / 居住文化 |
研究実績の概要 |
1)重文民家を所有・管理する自治体職員を対象とするアンケ-ト調査 重文民家を所有・管理する自治体の教育委員会文化課等の職員を対象に、当該重文民家の維持管理や活用に関するアンケ-ト調査を実施した(配布数120、回収数99、有効回収率83.3%)。1970年代に重文指定を受けた民家が多いが、それらに近年、公有化に移行するケ-スが多い。日常管理や大規模修理等の経済的負担が公有化に至る大きな理由であるが、公有化後は自治体に相当額の維持管理費が必要になっている点が課題である。近年は公有化と同時に、古文書や生活道具・家財も自治体が引き継ぐケ-スが増加している。その場合は建物内に昔の道具を展示するなど、生活文化の展示につながっていること等が明らかになった。 2)重文民家を所有・管理する自治体職員への聞き取り調査 アンケ-ト調査の回答住宅の中から、管理形態や公有化時の家財等の引継ぎ状況が異なる4事例を対象に各市の担当職員に聞き取りを行った。4事例は形式や程度は異なるものの、地域の生活文化を知り、当該住宅に愛着を持つ地域住民との関わりを維持しつつ重文民家の管理を行っている点が特徴であった。自治体が引き継いだ生活用品や家財等をかつての生活の場であった場所に展示するにとどまらず、その使い方等を知る地元住民が重文民家で道具類を使った日常生活行為を行っていくことで、重文民家を核にした生活文化の伝承が可能になるのではないかと考えられた。 3)英国Historic Houses Associationによる個人所有歴史住宅の支援活動 平成27年9月にHistoric Houses Associationや個人所有歴史住宅等を訪問し、歴史住宅の公開・活用支援、教育活用の支援等について資料収集を行った。わが国において、居住者が暮らしながら重文民家を活用する方法やその支援に応用可能な事項を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)公有重文民家を所有・管理する自治体を対象とするアンケ-ト調査および聞き取り調査の結果から、個人所有重文民家の維持管理や公開活用と共通する課題を見いだすことができた。これから、さらに詳細な分析とともに、事例調査を追加していく必要がある。 2)1年目に実施した重文民家の活用モデルの実践については、支援者の新たな開拓とプログラムの検討に時間を要した。今年度は具体的な実践はできなかったが、平成27年5月から新しいプログラムを実践する計画ができている。 3)英国のHistoric Houses Associationや歴史住宅の訪問調査からは、維持管理や公開・活用については、基本的にはわが国と同様の課題があることが把握できた。一方、英国ではHistoric Houses Associationが個人の歴史住宅と一般市民、行政の三者をつなぎ積極的に情報発信をしているが、この点はわが国ではまだ構築されていない。平成27年度の訪問調査は、平成28年9月にHistoric Houses Associationの理事を招いてシンポジウムを開催し意見交換を行うことにつながった。 以上を総合すると、研究全体としては概ね順調に進めることができたと考えられる。平成27年度の訪問調査が契機になって、平成28年9月にHistoric Houses Associationの理事を招いてシンポジウムを行うことにつながったことは、研究交流の上での進展である。
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今後の研究の推進方策 |
1)重文民家の活用モデルについては、新たなプログラムを実践するとともに、参加者へのアンケ-トから評価を行う。 2)公有重文民家および個人所有重文民家について事例の補足調査を行い、これまでの調査結果と合わせて課題の整理を進める。 3)研究成果の社会還元として、平成28年9月に「重文民家のいまとこれからを考える」をテ-マに公開シンポジウムを大阪市内で開催する。Historic Houses Association理事の基調講演のほか、重文民家の個人所有者、重文民家を支える市町村などの各立場のパネリストによる報告とディスカッションを行う。 4)3年間の研究成果を整理し、重文民家に住まいつつ居住文化を伝えて行くことの課題と今後の方向性をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
アンケ-ト調査デ-タの入力や資料整理作業に、研究代表者および研究分担者らで行った部分が多かったため、アルバイト謝金の支出額が当初の見込みよりも減少した。また、平成28年度に計画している研究成果還元のシンポジウムにおいて、英国からHistoric Houses Associasionの理事を招き研究交流を行うめ、研究当初は予定していなかった通訳費などの費用がかかる見込みになった。そのため、次年度への繰り越しを意図して、消耗品類の購入などを押さえたことが物品費の減少につながった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、研究成果の社会還元として9月に大阪市内でシンポジウムを開催する。英国からHistoric Houses Associasionの理事を招いて基調講演をしていただき、研究交流を行うため、招聘旅費およびシンポジウム通訳費に相当の費用が必要となる。平成27年度に生じた次年度使用額は平成28年度の助成金と合わせて、シンポジウムへの招聘経費や通訳費、報告書作成に使用する予定である。また、平成28年度の助成金は、重文民家のサポ-トモデルの実践と評価、重文民家の活用事例の補足調査にも使用する。
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