学童保育施設の空間構成について、子ども一人一人を識別した観察調査と分析に継続して取り組むことにより、子どもの過ごし方の差異と空間構成の対応関係についての知見を得ることができた。 第一段階で実施した教室転用施設における屋内過ごし方調査においては、集団との関わり方の個人特性と空間構成(開かれた大空間とコーナー型の小空間の関係)の対応関係を見出した。 第二段階では内外に小から大に至る段階的空間構成を持つ民間住宅転用施設二箇所における屋内外の過ごし方調査を行った。大人数での活発な遊び中心、一人での読書等の行為中心の二つのパターンを見出すとともに、中間的な存在として少人数での小さな領域を居場所とする過ごし方を見出した。 第三段階は、民間住宅転用施設に小さな滞留空間としての家具を付加する実験を行い、そこで生じる変化を検証した。この調査の分析により、子どもの過ごし方の中に、遊び主導、仲間主導、一人行為の3種の流れがあることを見出した。遊び主導は機能に沿ったまとまった空間でほとんどの時間を過ごし、一人行為は小さな隠れた空間から大集団の周囲まで多様な隙間で過ごすのに対して、少人数の仲間主導の過ごし方をする子どもがとくに付加された小さな滞留空間を使用していることがわかった。 第四段階では、単調なプレファブ型施設の空間に高低差をもたらす家具を実験的に製作し「一畳ロフト」と名付けて持ち込むことで起こる変化を検証した。過ごし方の中で形式の定まった過ごし方(定型)と形式とゆるやかで変化していく過ごし方(不定型)に区分した分類が有効であり、とくに不定型の過ごし方をする子ども達が「一畳ロフト」を使用することが明らかになった。 以上の成果から、子どもごとに異なる過ごし方に対応して、大空間、小空間、中間的な滞留空間の規模の多様性、開放・閉鎖性の多様を持つことの重要性を明らかにすることができた。
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