研究課題/領域番号 |
26420611
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
川鍋 亜衣子 秋田県立大学, 付置研究所, 准教授 (40404850)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 木造 / 木質構造 / 木材利用 / 公共建築 / コスト / 建設費 / 工期 / 木材調達 |
研究実績の概要 |
本年は、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の施行後にいち早く都道府県方針を策定し、それに先んじて公共建築物の木造化や木質化に取り組んできた秋田県での過去の取り組み実績を調べ、分析することを中心に実施した。 まず、能代市における7件の木造学校建設事業について、木材を利用する上で行った工夫を明らかにし、規模の大きい木造建築については、工期をどのくらい確保しどのような工程で事業を進行するか、木材の所要数量はどの程度を想定するか、木材の産地の範囲や規格・品質をどのように設定するか、木材の調達や供給を円滑にするためにどのような体制とするか、の方向性を示した。 さらに、この能代市の木造学校事例や秋田県で過去14年間に整備された99件の木造公共施設の実績から、木造公共建築物の建設工事費を分析し、用途や規模等による建設工事費の傾向を明らかにした。加えて、RC造やS造と木造の建設費を比較した複数の文献を収集し、木造と非木造で建設費に顕著な差があるとした文献がみあたらない点と、木造には規模が増すほど単価が下がるという規模効果がみられないとする文献が多いことを明らかにした。また、建設後の維持管理費について、能代市の学校施設の過去の事例においては、木造と非木造では顕著な差がないこと示した。 以上から、木造建築では、木材を大量に使用することや構造を木造とすることで非木造とは異なる課題や傾向が生じることを明らかにするとともに、それに対する解決方法を整理できた。また、コストについては資料が少ないことを明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分析対象の選定とそのデータ収集を精力的に行い、それらの分析を十分行うことができた。また、その結果を専門誌に12ページにわたって公表することができた。収集できたデータに関しては、初年度の研究の目的を達成できた。 しかし、研究計画時には自治体から提供される約束になっていた重要な資料のいくつかが、提供先の担当者の異動と変更に伴い提供してもらえないことになり、データの収集が見込めなくなった。そのため、予定していた「木造建築のコスト明細の分析」と「木造と非木造のコストの比較」をすることができなかった。また、12月下旬から年度末まで傷病で休暇をとったため、研究期間が短くなった。そのため、全体としては、研究の一部に遅れが出た。
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今後の研究の推進方策 |
分析対象の事例について、これまで情報提供をいただいた自治体、設計者、木材生産者以外に建設業者への調査を実施することで、自治体から提供してもらえなかった資料の補完を試みたい。 これにより、今年度は大枠でしかとらえられなかった「木造建築のコストの分析」と、既往文献の整理にとどまっていた「木造と非木造のコストの比較」を、独自のデータで試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
12月下旬から年度末まで傷病で休暇をとったため、研究期間が短くなった。そのため、研究の一部に遅れが出て、当初計画時よりも使用額が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度の研究の遅れを取り戻すよう、次年度の計画と合わせて研究を進め、使用する予定である、
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