研究課題/領域番号 |
26420617
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
桑田 仁 芝浦工業大学, デザイン工学部, 教授 (50276458)
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研究分担者 |
加藤 仁美 東海大学, 工学部, 教授 (00152736)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 建築線 / 土地区画整理事業 / 耕地整理事業 / 細街路 / 市街地形成 / 東京都 |
研究実績の概要 |
東京における地震・火災リスクが特に密集市街地において今でも高いことが、高度成長期以降、大きな問題でありつづけている。災害危険度の減少を目指す上で、建築物の防災性能の向上を図ること、および未整備な基盤を補強する適切な道路ネットワークを構築することが必要であるが、そもそも基盤が未整備である原因として、昭和初期に計画された警視庁告示積極的建築線、および細道路網計画が実現しなかったことが要因として挙げられる。本研究では、この両者の計画図をGIS上で重ね合わせることにより、実現度合いを即地的に検証することに加えて、現況の土地・建物利用を調査することにより、両計画が密集市街地の形成に与えた影響を分析することを目的とする。加えて、特定行政庁における狭隘道路および整備体制についても調査を行い、行政の運用面からも評価を行うこととする。 平成26年度は、研究初年度として研究環境を整えつつ、基礎的作業として1)参考文献のレビュー、および2)基礎資料のデジタル化を行った。 平成27年度は、平成26年度の作業2)基礎資料のデジタル化によって作成した、杉並区内の建築線指定図(約A1サイズ、縮尺1/600。以下「建築線図」)61枚の画像データについて精査した。その結果、61枚中54枚について、建築線図の位置を現在の地図上にて確定することができた。そして、それらの地図を鉄道駅近傍等19のエリアに分類し、エリアごとに、複数の建築線図を1枚の図に合成していった。さらにそれら合成した建築線図を、GIS上で現在の地図に重ね合わせるところまで作業を進めた。また、特定行政庁における狭隘道路および整備体制の調査を進めた。 平成28年度は、GIS上での作業に加え、特定行政庁における狭隘道路及び整備体制の調査をまとめ、過去に行った調査結果との比較を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は、平成27年度の作業を引き続き行った。すなわち、ベースマップとなる基盤地図情報上に、建築線図を重ねた上に、細道路網計画図および土地利用現況図をさらに重ねて分析を一部進めた。 その中で、杉並区内の一部分を大縮尺で切り出している建築線図を現在の地図上に重ね合わせるにあたっては、道路等の基盤形状、および旧町名(昭和13-18年ころ)が現在では変化している中で、大縮尺の地図に重なる場所を、杉並区全域を詳細に見ながら同定していく作業に時間を要しているとともに、新学部設立に伴う研究室の引っ越し・移転等が発生し、研究の進捗に支障をきたし、1年間の延長を申請した。 一方、特定行政庁における狭隘道路及び整備体制に関して調査をまとめたことにより、過去に行った調査結果との比較を行うことにより、行政運営からみた狭隘道路の整備の現況についての知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
エリアごとに集約されて、基盤地図情報上に重ねあわされた建築線図の上に、さらに都市計画道路の整備・指定状況図、および土地利用現況図の重ね合わせを行う。これは現状の都市計画道路の整備・指定状況図をGIS上に重ね合わせることによって作業を進める。加えて、おおむね5年おきに実施されている都市計画基礎調査の一環として調査される土地利用現況調査の結果を重ね合わせる。 これらの作業をふまえて、警視庁告示積極的指定建築線による道路網計画、細道路網計画、および現状の都市計画道路を対象とした道路網の計画論的評価を行う。まずは戦前の道路網計画の評価として、ArcGIS上にて、警視庁告示積極的指定建築線および細道路網計画について、空間的に一致する路線長の計測や分布状況を分析することにより、両者の計画論からみた一致点と異なる点を明らかにすることにより、当時の東京郊外である現在の密集市街地における街路整備政策が、どの程度一貫性・整合性を有していたのかを検証する。 これらの成果をもとに、現状の都市計画道路の整備・指定状況についてそれぞれの計画と比較する。実際に整備された都市計画道路、および戦前に計画された上記道路網予定地の土地利用を調査し、評価することに加え、特定行政庁における狭隘道路及び整備体制に関し、過去に行った調査結果との比較により、行政運営からみた狭隘道路の整備の現況についての知見を加える。 これらの検討を総合的にまとめ、過去から現在に至る、東京密集市街地における道路網に関し、計画意図とそれがどの程度実現したかを明らかにし、現在および今後の密集市街地整備に関する指針を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
建築線図を基盤地図情報上に重ね合わせて分析する作業について、研究環境移転等の理由による進捗の遅れが生じたため
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次年度使用額の使用計画 |
データ入力作業人件費、当該分野における専門知識を持つ関係者へのヒアリング経費、および参考文献や地図の購入費に充当する予定である。
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