研究課題/領域番号 |
26420618
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
伊藤 香織 東京理科大学, 理工学部, 教授 (20345078)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シビックプライド / 地域愛着 / 今治市 / アンケート / 構築環境 |
研究実績の概要 |
本年度は,まず,あらためて既往研究・既往文献の整理をすることで「シビックプライド(civic pride)」の概念を明らかにした.シビックプライドにはいくつかの側面があり,(1) 社会参画(civic engagement),(2) 都市アイデンティティ(civic identity),(3) 熱狂的愛郷心(civic boosterism)に大別される.これらに基づきシビックプライド指標を作成した. シビックプライド指標及び関係が深い地域愛着(place attachment)指標(既往研究を参考)を用いて,今治市でのアンケート調査項目を作成した.ウェブアンケート調査により,今治市民([一般市民])及びみなと再生事業に携わったことのある今治市民([まちづくり市民])に対して,「今治市の構築環境(built environment)の評価と地域への態度に関する調査」を実施した.併せて,今治市民に認知度の高い・誇りとなり得る構築環境プロジェクト(建築,公共空間,地区など)を複数選定し,各プロジェクトに対する態度・意識も問うた. まず,[一般市民]と[まちづくり市民]の比較を行った.その結果,ほとんどのプロジェクトの認知度に有意な差異はなかったが,訪問頻度には有意な差異が認められたプロジェクトが多く,その場での活動参画についてはほとんどのプロジェクトで有意な差異が認められた.価値認識については,多くのプロジェクトで「利用価値」認識に有意な差異が認められた.シビックプライド指標,地域愛着指標ともにほとんどの指標で[まちづくり市民]が有意に高い結果となった.これらから,単に地域に住まい,地域を知っていることではなく,まちを使い能動的に参画することと,シビックプライドや地域愛着の高さが関係することが明らかになっている.シビックプライドの構造については引き続き分析中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概念の見直しとシビックプライド指標の作成に時間を要した.また,今治市では,みなと再生事業に遅れが生じただけでなく,構築環境(built environment)に対する一般市民の関心が高いとは言えず,その中で効果的な調査を行うための調査設計に時間を要した.
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今後の研究の推進方策 |
今治市のアンケート調査結果については,まだ分析が終わっていないため,今後,シビックプライド構造を明らかにするための分析を引き続き行う.また,シビックプライドと地域愛着,シビックプライドと構築環境(built environment)の価値認識との関係も明らかにしていく. 今治市については,みなと再生事業の遅れや構築環境に対する市民の関心や市民参加の低さが研究遂行上問題になったため,今後は,近年,都市再生に一定の成果を出していると認識されている複数都市に対象をシフトし,同様の調査を行う.特に構築環境の再整備等を伴い,そのプロセスへの市民参加や整備後の空間の市民による活用が盛んであるような事例を選定する.現在,いくつかの候補都市を挙げており,関係者への聞き取りをして対象を絞っていく. 調査を行う際には,今治での調査・分析結果を踏まえ,指標の修正を含む調査手法の見直しを行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
概念の見直しとシビックプライド指標の作成に時間を要し,それに伴ってアンケート設計が遅れ,予算の主たる使途であるアンケート調査着手が1都市に留まったため.
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次年度使用額の使用計画 |
骨格となるアンケート設計はできたため,次年度はそれを援用し微修正しながら複数都市に対してアンケート調査を実施する.
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