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2014 年度 実施状況報告書

フィリピン・セブ市の土地取得事業と社会関係資本蓄積メカニズムの研究

研究課題

研究課題/領域番号 26420619
研究機関東洋大学

研究代表者

小早川 裕子  東洋大学, 国際地域学部, 講師 (90459842)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード土地取得事業 / 条項93-1 / コミュニティ開発 / 社会関係資本 / 都市貧困層 / 参加型開発 / フィリピン / セブ市
研究実績の概要

平成26年度の研究計画は、①これまでの調査資料の整理および新規情報の収集、②当該調査地において認められた住民主体性のコミュニティ開発が、土地取得事業返済を拒む住民の排除へと傾きつつある現象に関する調査、③①と②の調査から、地域に蓄積された社会関係資本の構造と性質の分析をすることを目的とした。
本年度の調査から、当該地域の状況が大きく変わってきていることを確認できた。①の新規情報に該当するものは次の通りである。第1に、現役のバランガイ・キャプテン(町長)が突然、家族とアメリカへ移住し、第1バランガイ職員で町長の義理の弟が繰り上り、町長を引き継いだ。第2に、新町長は他地域に会社を持ち、バランガイ・ホール(町役場)を不在にしがちである。第3に、地域内の様相も徐々に悪化してきた。当該地は、社会関係資本の蓄積により地域が活発化したセブ市のモデル地域である。その地域の町長が変わったことをきっかけに、住民が地域に対して無関心、無責任、非協力的など、逆行傾向を強めていることを確認した。
一方、土地取得事業では大きな前進が見られた。今年になって新規条項93-1土地取得事業で土地を取得したいと願う住民たちが、過去10年間の土地の値上がり分と都市貧困層として可能な返済額を計算したものをまとめ、住民から州知事へ事業提案するという偉業を成し遂げた。このこと事態は地域として大きな進展であるが、今後は土地取得事業に反対する住民を排除していくことにつながり、②の現象を強めていくことを示唆している。
本調査では、新規条項93-1への参入を希望する各世帯の世帯数、返済額と返済期間などのデーターを収集できた。返済形態は、住民組織で返済するマイクロファイナンス型ではなく、個人の直接返済型が選ばれた。住民たちは今回が土地を所有できる最後のチャンスと認識していた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

報告者は当初の計画以上に進展していると認識している。それは、26年度の調査中に当該地域住民が新たに土地取得のための返済額や返済方法を土地所有者であるセブ州政府知事に提案したことによる。10年越しで放置状態にあった条項93-1は、これから専門家が調査検討し、住民の提案は新規事業として成立されることが知事によって約束された。
住民が土地取得に向けて具体的に動き出した要因は、進展する周辺地域の都市開発にある。セブ・ビジネス・センターと名付けられた当該地域の周辺は、道一本を隔てた場所の開発であり、地価上昇が著しい。そのため、居住権を持たない当該地域住民は日々不安な生活を送っている。1989年に初めて土地取得事業が当該地に導入されて以来、多くの住民は都市貧困層であることを盾として、政府が彼らに情けを掛けることを期待し、一度は結んだ契約も69%の世帯が返済滞納し事業は失敗していた(2007年の調査より)。
当該地域では土地取得事業自体は失敗していたが、住民に所有者意識をもたらせ積極的に地域の取り組みに参加するようになっていった経緯は確認されていた。今回は、都市貧困層に理解を示してきた元セブ市議会議員が州知事に選出されたこと、また、周辺の都市開発の進展が目覚ましいことから、住民は自分の生活を守るという共通した目的のために再度立ち上がった。本調査で、住民たちの取り組みに参加できたこと、彼らが提案した返済計画を入手できたこと、そして、州知事への新規土地取得事業提案提出に同行できたことは、計画以上の収穫となった。

今後の研究の推進方策

27年度は、入手した返済計画のデーター入力と分析を行う。現地調査では、州政府が手配した土地測定・評価の専門家の進捗状況を調査し、住民が提案した新規土地取得事業に対する州政府の最終的な決断を探る。
研究対象地域であるバランガイ・ルスにおいては、二つの側面から調査を進める。1点目は、今回新規土地取得事業に参加しなかった住民のその後の反応、当該事業導入に否定的な住民に対する地域の対応と決断といった、土地取得事業を通じた地域住民の動きである。2点目は、26年度の調査から認められた当該地域の後退に関して詳細に調査し、その要因と地域としての対策・取り組みを明らかにしていく。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 1.持続可能な都市貧困層対象住宅建設を目指して:フィリピン・セブ市の需要と供給のギャップと実情2015

    • 著者名/発表者名
      小早川裕子
    • 雑誌名

      東洋大学『地域活性化研究所報』

      巻: No. 12 ページ: pp. 49-56

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 1.On-Site Socialized Housing Program: A Comprehensive Approach towards Sustainable Community Development2014

    • 著者名/発表者名
      小早川裕子
    • 雑誌名

      The International Academic Forum (IAFOR) 2014, The Asian Conference on the Social Sciences

      巻: - ページ: pp. 513-524

    • DOI

      ISSN-2186-2303

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 2.スラム世帯経済のフォーマル化と持続的な返済システムの形成:持続可能な都市貧困層向け社会住宅事業の実現に向けて2014

    • 著者名/発表者名
      小早川裕子
    • 雑誌名

      都市計画論文集

      巻: Vol.49, No.3 ページ: pp.675-680

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 3.Fund Revolving Socialized Housing Program for Sustainable Community Development to Achieve Millennium Development Goals2014

    • 著者名/発表者名
      小早川裕子
    • 雑誌名

      Proceedings of the First Conference of International Alliance for Sustainable Urbanization and Regeneration, “Sustainable Society as Our Challenge”

      巻: Vol. 1 ページ: pp. 262-271

    • 査読あり
  • [学会発表] Fund Revolving Socialized Housing Program for Sustainable Community Development to Achieve Millennium Development Goals2014

    • 著者名/発表者名
      小早川裕子
    • 学会等名
      Proceedings of the First Conference of International Alliance for Sustainable Urbanization and Regeneration, “Sustainable Society as Our Challenge”
    • 発表場所
      Kashiwa-no-ha Gate Square, Kashiwa City, Chiba, Japan
    • 年月日
      2014-10-24 – 2014-10-27
  • [学会発表] On-Site Socialized Housing Program: A Comprehensive Approach towards Sustainable Community Development2014

    • 著者名/発表者名
      小早川裕子
    • 学会等名
      The International Academic Forum (IAFOR) 2014, The Asian Conference on the Social Sciences
    • 発表場所
      The Rihga Royal Hotel, Osaka, Japan
    • 年月日
      2014-06-12 – 2014-06-15

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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