本年度は、貸住宅の維持管理を行わない家主への対抗措置として、管財人制度に着目し、メリーランド州ボルティモア市とペンシルベニア州フィラデルフィア市の関連法令及び両市担当部署・関連団体へのインタビュー調査を実施した。両市の管財人制度の概要を踏まえた上で、ランドバンク及び税差押え不動産の競売と比較し、管財人制度の妥当性・自治体にとっての利点・限界を検討するとともに、両市の制度の比較を行った。 調査結果としては、主として以下のことがあげられる。 1)両市の制度は、非政府セクターが周辺に悪影響をもたらしている空き家の修繕や除却を行うことにより、不動産市場の機能を活用した、維持管理が不要とともに行政代執行と比較して財源的にも人的にも公的負担の少ない空き家再生方策である。 2)ボルティモア市では、住宅需要のある地区内の、修繕命令不履行の空き家を対象に、市が設立に関わった非営利団体を管財人に任命するように裁判所に申立てし、その団体が競売にかけ、新規所有者が空き家を修繕して販売するという流れが確立されている。そのため、準備に手間のかかる申立てを民間にゆだねているフィラデルフィア市の制度と比べて、各段に実施件数が多く、具体的な効果ももたらしている。 その他として、カリフォルニア州サンディエゴ市において、空き家管理を含む都市計画全般の取組ついてヒアリング調査を行った。これについては、今後取りまとめる予定である。
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