研究課題/領域番号 |
26420628
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
中井 孝幸 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (10252339)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 公共図書館 / 大学図書館 / 学校図書館 / 複合化 / ついで利用 / 読書習慣 / 充実利用 / 場 |
研究実績の概要 |
・平成27年度は、複合施設内に図書館がある施設として、田原市中央図書館(田原文化会館)、福知山市立図書館中央館(市民交流プラザふくちやま)、塩尻市立図書館(市民交流センター・えんぱーく)において、土曜日一日の全来館者を対象としたアンケート調査を実施し、図書館とその他施設機能とのついで利用の状況について分析を行った。また福知山市民交流プラザは15分ごとの巡回プロット調査を行い、館内での利用行動を観察した。 ・島根県海士町で「島まるごと図書館構想」を掲げている海士町立図書館の中央館1館、分館13館の全14館を対象に約1週間をかけて、平日と休日に図書館の利用状況について来館者アンケート調査を実施した。そのうち小学校2校、中学校1校の学校図書館では、全校児童・生徒に読書習慣や図書館利用の有無についてアンケート調査を行った。分館は小中高の学校図書館を含み、公民館やフェリー待合、保育園、町営の学習塾や学生寮などに併設され、中央館といくつかの分館にはカフェコーナーもある。 ・さらに、愛知県内の学校図書館を児童と生徒が共用している、小中一貫校の飛島村立飛島学園と小中併設校の日進市立竹の山小学校・日進北中学校において、2、4、6年、中1、中3の5学年の児童・生徒を対象に、読書習慣や図書館利用の有無についてアンケート調査を行った。また、学校図書館が開館している時間に30秒ごとに定点カメラで撮影を行い、画像をもとに利用状況を分析した。 ・大学図書館は、新たに調査を行わなかったが、平成26年度に調査した愛知県内の大学図書館での調査結果をさらに詳細に分析を進め、アンケート調査と巡回プロット調査の結果を組み合わせてラーニングコモンズ(LC)と開架エリア(LC以外)での行動場面の抽出を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・図書館を含む複合施設のでは、図書館を使わない人は約15%、図書館と他の施設を利用するついで利用者は15~20%となっている。施設規模や複合している機能にもよるが、図書館のある複合施設では約8割の利用者が図書館を利用し、ついで利用者は約2割となり、図書館利用者が大半を占めている。つまり、複合施設といえども、よい図書館を計画しなければ図書館も利用されず、複合施設全体の利用率も下がることが整理された。 ・海士町の図書館調査から、①利用圏域は島全域に広がり、②利用者に合わせて選書を行っている分館と中央図書館をうまく使い分け、③利用者の多くは「Iターン組」に偏っているが、④保育園・小学校・中学校・高校の学校図書室との緊密な連携が子どもたちの活発な読書活動を支え、⑥利用者の生活スタイルに寄り添った図書館計画が住民の読書習慣や多様な学習活動つまり「充実利用」につながっていることが整理された。 ・学校図書館での利用から、中学生と小学生が同時に利用する際に、小学生の利用範囲が狭くなるなど、「場」の棲み分けなどが意識されていることが整理された。また、学年が上がれば図書館を利用する児童・生徒は少なくなるが、学校図書館をよく利用している児童ほど公共図書館もよく利用しており、家庭の本棚、学級文庫、学校図書館、公共図書館といった子どもたちの読書を支える連続した環境が、読書習慣を支えることにつながると考えられる。 ・大学図書館でのラーニングコモンズと開架エリアでの利用状況から、学習環境として学生たち利用者が、周囲の音環境、個人利用かグループ利用か、作業のしやすさなどの指標から6つの「場」の段階を使い分けていることが整理できた。
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今後の研究の推進方策 |
・複合施設や海士町での調査結果から、ゆるやかに連携した複合施設では、単独館では現れない施設サービスへの需要が掘り起こされ、今まで利用してこなかった人たちに、施設利用のきっかけを与えることができると考えられる。 ・塩尻市民交流センターの「えんぱーく」は吹抜けが多く、壁やガラスで各機能が仕切られていないためか、図書館を含むついで利用が約3割と他の施設に比べて多くなっている。エリアを限定しない空間のつながりが、利用者の多様な利用を促しているのではないかと考えられ、空間構成に特徴のある複合施設を対象に調査を行っていきたい。 ・海士町と学校図書館での調査より、子どもたちの読書習慣を支えるには連続した本のある環境が大きく影響しているのではないかと考えられる。さらに海士町のように図書館とカフェなどが複合している図書館では、図書館プラスアルファの「充実利用」が行われていた。こうしたことから、疎住地のような地方の小さな都市で、図書館活動が活発な地域を対象に、公共図書館と小学校・中学校などの学校図書館をセットにした地域で、子どもから大人まで読書習慣や図書館に期待されている「場」としての機能について調査を行いたい。 ・東日本大震災から5年が経過したが、また新たに熊本地震によって甚大な被害が生じており、避難生活や被災からの復興にも時間がかかることが予想される。こうした状況の中で、公共施設が提供するべきサービスについても検討する必要があり、被災地での図書館利用や整備計画についても継続して見守っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度より疎住地における図書館や小中一貫校・小中併設校の学校図書館での利用調査を新たに行い、次年度以降も事例を増やし、調査補助や集計作業への謝金へ回そうと考えたため、次年度使用額が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
地方の小さな都市のゆるやかに連携した複合施設で、図書館活動が活発な地域を対象に、公共図書館と小学校・中学校などの学校図書館をセットにして、単独館では現れない施設サービスへの需要が掘り起こされ、子どもから大人まで読書習慣や図書館に期待されている「場」としての機能について調査を行いたい。
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