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2016 年度 実施状況報告書

局所的な土地利用変化は長期的にみて都市気象に影響を与えるか

研究課題

研究課題/領域番号 26420631
研究機関関西学院大学

研究代表者

客野 尚志  関西学院大学, 総合政策学部, 教授 (80322725)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード都市化 / 階層ベイズモデル / GIS / ランダム効果 / 成熟社会
研究実績の概要

当該研究は、局所的な土地利用変化が周辺の都市化に与える影響を推定して、その上でこれが都市気象に及ぼす影響を定量的に評価することにある.成熟社会の都市化は、土地利用変化に直接現れる宅地そのものの増減というよりはむしろ昼間および夜間人口の変化という形で現れることに着目し、都市化圧については宅地開発でなく人口の増減によりもたらされると仮定し研究をすすめた.そしてこの都市化圧の空間的伝搬過程を階層ベイズモデルにより定型化し、実際のデータをもちいてそのモデルの妥当性を評価し、その上で都市気象への影響を評価することを予定していた.
しかしながら成熟化の都市においては、都市化が進展する地区と縮退する地区が複雑に入り組み、これらの存在が与える影響を数学的に評価し、定型化する過程は極めて複雑であり、影響要因の設定、およびそのデータの修正について、モデルの検討や修正にあわせて、なんども試行錯誤する必要があり、このプロセスに時間を取られたために、後半の都市気象の影響評価にまではいたることができなかった.ただ、都市化圧の空間的伝搬の数学的な定型化とモデル化、そしてそのモデルにより現実の土地利用変化を記述することにおいては試行錯誤の上一つの成果をだすことに成功した.特に、数学的な定型化においては検討と試行錯誤を重ねた結果、周辺の都市化が与える影響の大きさについて、通常の静的な回帰モデルのように一律に扱うのでなく、空間的ランダム効果を内包するような形で一種の動的なモデルとして定型化することに成功した.これにより、都市化の伝搬の力、すなわち都市化圧の影響の大きさそのものの分布を評価することが可能となり、次なるステップに進むことが可能となった.
これと並行して、ランダム効果に着目した都市気象の予測のモデル化に関する研究について学術論文として過年度投稿していたが、当該年度にそれが採用され掲載にいたった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

理由は主に2つある.まず、第一の理由は、当該研究実績にも記述したとおり、成熟社会下の都市においては、都市化が進展する地区と逆に都市が縮退する地区がモザイク状に入り組んで存在し、個々の地区の状況について、周辺の都市化あるいは縮退が着目する地区の都市化にあたえる影響の評価も含めて、これを数学的に記述、定型化することがきわめて困難であり、その試行錯誤の過程に多くの時間を取られたことにある.また、数学的な定型化が複雑になればなるほど、プログラムの実施速度が遅くなり、その高速化あるいはアルゴリズムの効率化の作業といった、改良作業に一定時間を費やしたことも挙げられる.
もう一つの理由は学内における、想定外の業務の増加であり、これにより研究のために割り当てることができる時間が当初想定よりも減少したことにある.

今後の研究の推進方策

成熟社会の都市の特徴としてモザイク上に都市化が進展する地区と縮退する地区が入り組んだ状況において、着目する地区の都市化がどのように立ち現れるかということに関する数学的な定型化については完了として、次の段階に研究を進める.
まず、定型化したモデルのプログラムへの実装について、処理速度の向上、交差検証という点で改良の余地があるので、その改良の作業を完成させる.
次に、上記のモデルにより、周辺の地区の都市化あるいは縮退があたえる影響力を地区ごとに算出し、その空間分布を地図上で表現して、影響力の偏在の状況などを分析し、それがどのような要因によりもたらされるかということについて考察を重ねる.当該研究においては、人口を昼間人口と夜間人口にわけて捉えているので、両者により影響力は異なって立ち現れると考えるので、そのことも含めて考察を進める.
次に、現在の都市が今後どのような姿を描くのか、得られたモデルによるシミュレーションを実施し、それをGISなどをもちいて可視化する.3D表現やアニメーションなども工夫し、成熟社会における都市化の進展、縮退をわかりやすく表現する方法を工夫する.
最後にこのシミュレーションの結果から、都市気象がどのように変化するのかということについて、予測を実施する.人口あるいは土地利用に基づく原単位から気温分布を予測し、その予測された気温を描き出すことにより、都市全体として温度上昇が進むのか、あるいは上昇する部分と降下する部分がどのように分布するのかということについて考察する.
最後にこれらの研究をとりまとめて、成熟社会化における都市環境計の立案に資する一つの方法論として定型化して総括する.

次年度使用額が生じた理由

研究計画が当初予定より遅延しているために、当初想定した作業が実施できなかったために一部予算が執行できなかったこと、さらに研究計画の推進において予算の効率的な使用を心がけ、当初算定していたものより低い経費で研究を実施することができたことなどから、次年度への繰越が発生した.

次年度使用額の使用計画

当初、今年度までに実施する予定であった内容のものについて、順次実施し、それにかかる経費として当該予算を使用していくことを予定している.具体的には、論文投稿や英文校閲などにかかる費用、研究発表などに関する費用、成果のとりまとめや報告書の作成などに関係する費用を想定している.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] Methodology for Evaluating Influences of Anthropogenic Factors on Temperature Formation of Summer Seasons Considering their Randomness -Verification Through the Hierarchical Bayesian Model-2016

    • 著者名/発表者名
      Takashi Kyakuno
    • 雑誌名

      Journal of Asian Architecture and Building Engineering

      巻: 15 ページ: 643-650

    • DOI

      http://doi.org/10.3130/jaabe.15.643

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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